よみもの

□Old Fashioned Love Song
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例えばの話だよ・・・


「アスランと僕の間に産まれる子は、どんな子かな〜?」

「・・・・・・・・・・・!?」

何気なく聞いてみたら、アスランは目を丸くして口をぱくぱくさせた。
ほんのり赤く色付いた頬が可愛い。

「きっとアスランに似て超美形・・・っていうか、アスランと瓜二つだと良いなぁ」

「はぁ・・・それじゃあキラの面影皆無じゃないか」

少し呆れたように息を吐く仕草も僅かに色気を帯びていて堪らなくソソる。

「だいたい、何で俺とキラなの?」

キラの事は好きだけど、そんなんじゃないし。

第一僕等は
男同士。

さらりと告げるアスランを見て、きゅっと胸が痛んだ。

僕は・・・アスランみたいに上手く割り切れない。

「良いでしょ〜、別に。例え話なんだからさ」

「まぁ、ね。じゃあ・・・こういうのはどう?」

他意が無いように振る舞うとアスランはあっさり納得した。
空想に興味を示したのか、少しだけ僕に近づいて内緒話をするように悪戯っぽい笑みで言う。

アスランの吐く甘い吐息が、顔に触れた。

唯でさえ子供体温な僕の体が急に熱を上げ始める。
アスランが楽しそうに話しているけれど、僕はその半分もマトモに聞いていなかった。

聞いているのは甘く少しだけウィスパーな声

見ているのは淡い桃色に色付いた柔らかそうな唇




思わず

指でそっと、せわしなく動く唇を撫でた。





「キッ・・・・・・キラ!!??」

「凄く綺麗・・・」

「な、に・・・が」

「アスラン。」

アスランは絶句して僕を見返した。
僕の指が唇から頬へとスライドしていくと、びくりとアスランの体が跳ねる。

「愛してる・・・」

勢いに任せてアスランに抱きつく。抱きついた反動でアスランを押し倒すようにして倒れた。

「やっ・・・!!ふざけるのは止めろよ!!」

アスランは真っ赤になって

少しだけ
怒っていた。

アスランは慌てて僕を引き剥がそうとするけれど、渾身の力でアスランに縋り付く僕はそう簡単には離れなかった。

「嘘じゃないよ・・・」

「嘘だ!また俺のことからかって遊んでるんだろ!」

アスランが間髪入れずに否定する。

辛い。

僕とアスランのお互いに対する想いが、完全に擦れ違っている。


それを認めるのが嫌だった。

「・・・アス、ラン。」

柔らかな藍色の髪を撫でて、唇を近付ける。

アスランが、急に態度を変えた僕を恐れて涙ぐみ

怒ったような、
悲しんでいるような、

そんな顔をする。





そんな顔で、僕を見ないで・・・





あともう少しで唇に触れそうなくらい、顔が近づく。

「愛して・・・っ!?」

言いかけた瞬間、アスランが思い切り僕を下から蹴飛ばして離れた。

口の中で鉄の味がする。

「やめ・・・ろよ・・・今日のキラ、変だよ!!」

大きな翡翠の瞳が涙の膜に覆われてゆらゆらと揺れている。

声も体も小刻みに震えていた。

「おかしいよ・・・キラ・・・・・・」

「そう・・・かな・・・・・・」

「・・・だって!!俺達、友達なのに・・・」

『友達』。

そう、アスランの感情は

そこにある。

「ごめん・・・・・・」

僕は

もう長いこと
『友達』じゃないから。

友達だった頃の気持ち
忘れちゃったから。





もう、戻れないんだよ。





昔みたいには・・・・・・。

謝る僕を見てアスランが声を荒げて吐き捨てた。

震えが酷くなってる。

「ごめんって・・・何?俺、嫌だよ・・・こんな・・・訳分かんない・・・・・・」

いつも冷静なアスランが、動揺していた。
自分の髪をくしゃりと握り締めて俯いている。






・ ・・ごめんね。

君を困らせちゃって。



こんな

君が苦しんでいる時にすら
その姿が愛しいと思ってしまう



僕を許して。



「アスラン・・・」

今にも零れ落ちそうな涙を拭おうと、手を伸ばした。

「さ、触るなぁっっ!!」

アスランの体がびくんと跳ねて、僕の手を拒絶した。
アスランの白魚のような手が乱暴に僕の手を払い除ける。

「キラのバカ!!キラなんか大嫌いだ・・・!!」

堰を切ったようにアスランがぼろぼろと涙を流して泣き出す。
自分の肩を抱いて、揺らいでいく心を必死に押さえ付けているようだ。

僕は手を払われた格好のままで泣いているアスランを見ていた。


嗚呼、なんて綺麗な涙。


「っう・・・・・・ふ、うぅ・・・・・・」

「ごめん・・・アスラン・・・・・・ごめんなさい・・・」

「・・・き・・・らぁ・・・っ」

僕はアスランに触れられない代わりに何度も謝った。
こうなってしまう事は何となく解っていたのに、我慢出来ずに告げてしまった。

告白するのを我慢する度に
どんどんアスランが好きになって

押さえきれなくなっていたから。





愛してる。
嘘じゃないよ?





友達のままじゃあ

もう

辛いんだ。



fin

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