よみもの
□ちょっとだけ。
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毎日、アスランのいる部屋に足繁く通い好きなだけベタベタするのが日課になっていた。
もちろんアスランは人前でもイチャつく僕を叱り付け、度が過ぎた時には
「一週間面会禁止令」
なんて言うのを出した時もあった。
道徳心と理性の塊みたいなアスランが、僕に甘えたり我が儘を言ってくる事は滅多にない。
それでも、アスランが僕を好きだっていうのは態度で分かるし側に居られるだけで幸せだったから
それで良かった。
今日も
いつものようにアスランの部屋に押し掛けて
数日前から取り組んでいる新たなハロの製作に取り組むアスランを見ていた。
机に向かうとすぐに周りが見えなくなるみたいで、僕がぎゃあぎゃあ騒いでもあまり文句は言わない。
長い間じっとアスランを見つめて良いのもこの時だけ。
ハロに集中しているせいかちょっと俯き加減で猫背になっている。
柔らかく垂れている深い藍色の髪は白い肌に良く映える。
伏し目がちな翡翠の瞳もアスランと繋がっている間とは違う色香が漂っていた。
その目で見つめられたら…
と、たまに身悶えする時がある程だ。
───かしゃん。
「……っ!?」
ずっとアスランの顔ばかり見ていた僕は突然の衝撃音に驚いて咄嗟に音のした床を見る。
アスランの足元には小さなドライバーが落ちていた。
「あ…。」
僕よりも少し遅れてアスランがそれに気付く。
ゆっくりとした動作でドライバーを拾い上げ、何事も無かったかのように作業を再開した。
ふと
ドライバーを握るアスランの手に目をやる。
細くてしなやかな指は軽やかに動いて、もう数えるのも億劫になるくらいのハロを形作っていく。
本当はその綺麗な指を傷付けたくないからやめて欲しいんだけど、アスランの唯一の趣味を取り上げる訳にもいかずやきもきしながら見守っていた。
「あすらんっ。楽しい?」
どうも小さい頃からこういうのが苦手だった僕は、一体どんな気分でペットロボを作っているのか聴いて見たくなった。
「…え?うん。楽しいよ…っていうか…」
確かに機械をいじっているのも楽しいけど
自分の作った物を人にあげた時にその人が喜んでくれるのが
…嬉しいから。
アスランにとってそっちの方がウエイトが大きいみたいだ。
どこまでも綺麗で優しい君。
少し笑って僕を見たアスランの顔がたまらなく可愛くて
抱き締めたくなった。
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