- 短篇集 -


□Yellow Eyes
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――晴れた午後

今日も日課の散歩に出掛ける。
柔らかな日差しの中に春の訪れを感じて、くっと伸びをする。

『あ〜っ、良い天気♪』

ある建物の前を通りかかる。
中には人影。
私は立ち止まって様子を伺う。
薄暗い建物の中からカタンッカタンッと規則正しい機械音が響く。

暫らく様子を見ていると、作業していた中の人が振り向いた。
やや背の高い女の人が黒い汚れたつなぎを着て頭にはタオルを巻いている。

「何よぉ…」

その人は入り口に座り込んでいる私に向かってそう呟いた。

『別に〜ぃ』

私はけだるげにそう返す。
彼女は「ふんっ」と小さく鼻をならして作業へと戻った。

日溜まりの心地好さに微睡みながら、また暫らくの間私は彼女が作業しているのを眺める。
私の視線が気になるのか、彼女は再び私に視線を戻す。

『こんな良い天気の日に仕事だなんて、ご苦労なことね』

私は欠伸混じりにそう言うと、彼女の眉間に薄く皺が寄った。

「――暇人。」

『失礼ねぇ!私は別に仕事なんかしなくったって食うに困ることなんてないのよ!』

彼女はまた「ふんっ」小さく鼻をならす。

『私は可愛いからぁ〜、放っておいたって誰かがご馳走してくれるしぃ〜♪』

私は上目遣いで挑発する。
「何か…ムカつく…」と言う彼女に私は止めを刺す。

『まぁ、負け犬の遠吠え?』

「どっか行け!この野良猫!」

彼女は私に数歩勢い良く近づき、手を大きく払った。
私は素早く身を翻し、彼女から僅かに飛び退く。

「ホンット可愛くないっ!」

そう罵る彼女を少しだけ振り返り、私は口角を上げて笑う。

「なっ…腹立つぅ〜っ!!」

――あ〜ぁ、本当に人間をからかうのって面白いわ♪


- Yellow Eyes - 完

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