全てはアリスの悪夢と共に


□壱の夢 … 白兎
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私は先回りをし、大きな岩の陰に身を潜め、アイツが通るのを待った。どうせまたあの高飛車で我が侭な女王の城目指してんでしょ?給料も出ないのに、よくあんなのの言いなりになってるわよね…。服従願望強過ぎ。マゾじゃない?

「ほんっと、マジヤバイ!!今度遅れたら首が飛ぶんだっつううのに、なんで寝坊してんだオレっ!だーっ!あと15分28秒しかねぇ!!!」

ほら来た。また独り言言ってるし…。アイツ、独り言のくせに声でかいのよ。馬鹿な奴。馬鹿で、マゾ。救いないと思わない?

『あははっ、ま。そこが可愛いんだけどvV』

あんなでぶっちょ女王には勿体無いのよ!アイツは私が頂くわ。大体あの女王ときたら、脅し文句が【首を跳ねておしまい!】って。他力本願かよ!そこは自分でやらなきゃ意味が無いじゃない!!縛って、吊るして、とことん虐めてやるんだから。きっとその方がアイツも喜ぶわ!

(嗚呼…来た来た!可愛い可愛い兎さん!!)

私は向いの木に括りつけておいたロープを思いきり引いた。案の定アイツはロープにけ躓き、派手に顔面から地面へダイブした。ありゃぁ、痛いな。いい気味だわ。一瞬固まってたけど、のろのろとアイツは起き上がった。

「痛ってぇ…。っんだよ!!」

(――涙ぐんでるし!!可愛い〜っvV)

きっちり着込んだモーニングコートもボロボロで、小さく愛らしい口の端は切れ、林檎の様に赤い血が滲んでいる。蹲まり突然の痛みに堪えている瞳は、ふわふわと風に靡く前髪の陰で潤んでいる。



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