- 短篇集 -


□Are U my friend?(※)
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 彼の言葉に、男がこちらに目を向ける。今一度、男は僕に向かって動くなと念を押す。その間も、彼は命乞いよろしく、僕に助けを求め続けた。
「頼むよ……俺達、友達だろ?」
「五月蠅いっ!黙れっ!!」
 無様に言い募る彼を羽交い絞め、男が声を荒げる。じっと見詰めたまま動かない僕を、男は警戒しているようだった。カウンターへ向かうには、僕の前を通ることになる。厄介だと思わない訳がない。
「何で助けてくれないんだよっ!」
 擦れ違いざま、彼は薄らと涙を浮かべ、僕を責めた。男も僅かに歩みを緩め、僕が何か行動に出るのではないかと、こちらを睨み付けている。僕の返答を待っているのか、無駄に長い沈黙が訪れた。
「なんで、僕が助けなきゃいけないの?」
「友達だろっ?!」
「友達だよ。」
「だったら助けてくれてもいいじゃないかっ!!」
「だから、なんで?」
 僕の言葉に、彼の表情は険しさを増してゆく。友達だから絶対に助けなければいけないのかと言えば、決してそんな事はない。誰だって自分の身が大事なのだ。自分の身を守れて、尚且つ、人を助ける余裕のある奴ならば話は別だろう。僕にそれができるのかと問われれば、無理だと言わざるを得ない。
「僕の命と引き換えに君を助ける理由は?友達だったら、君の為に死ななきゃいけないのかい?じゃぁ、僕が君の立場だったら、君は僕の為に死んでくれた?絶対にそんなこと、しないよね?だから、僕も君を助けたりはしない。僕だって、まだ死にたくないからね。」
「――はっ、賢明なこった。テメーは大人しくそこに突っ立ってりゃぁいいんだよっ!」
「勿論、そのつもりだよ。」
 僕がそう言ってにっこり笑うと、男は醜い笑みを浮かべ、彼を引きずりながら僕の前を通り過ぎて行った。彼は、尚もうわ言の様に「何故なんだ」と口走っている。そんな事、聞かなきゃ解らないなんて、笑ってしまう。
「なんでなんだよ……惣介。」
 用を済ませて戻って来た男が、僕の前を通る時、憐れみを誘うような表情で彼が問う。必死で考えているのだろうに、まだ解らないのかと思うと、流石に呆れてしまった。自分は僕よりも勉強ができると何時も鼻にかけているくせに、肝心な時に使い物にならないんじゃ、その性能も疑わしい。



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