小説

□60lの恐怖と30lの痛み、そして10lの愛情で
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(ただいま。)

優奈は誰にいうのではなく
心の中で呟いた。

自分がこの家には歓迎されてないと知っていれば言う気も失せるだろう。


優奈はここの家に養女としてきた。

親の顔は知らない。
まだ赤ん坊の優奈を置き去りに出て行ったそうだ
そして引き取ったのがまだ子供がいなかった叔父夫婦だった。

最初は子供がいないせか可愛がってくれたが
その数年後に子供が産まれた。

この時点で優奈は用無し。
いらなくなってしまった。

もう口をきかないし、目も合わせない
ほったらかし状態のままで
幼少時代をすごしてきた。
もちろん今も


それでも、「ただいま」と心の中で呟いてしまうのは、まだあの人達に期待しているのだろうか?
また、優しい笑顔をむけてくれることを。

(まぁ、飯の材料と寝る場所をくれるだけでもマシだよね。)

そう思いながら、リビングへのドアを開ける。

部屋を覗き込みながら
(いないよね。ちょっと出かけてこよう。)
そう思いながらなにげなくソファーを見た。
優奈はそこで視線を止める
驚きで目を見開く

そこには見知らぬ男がいた。


自分と同い年ぐらいだが、顔中傷だらけだった。
そして、怯えた顔でこちらを見ている。

そんな彼に優奈は

「だれだ、お前」

と言い放った。
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