贈り物小説

□愛のカタチ
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満月も更けた夜。

私はナギさんと、宴の後片付けと朝御飯の仕込みを手伝って、部屋に帰るのがすっかり遅くなってしまった。



「…遅い」

「……すいません」



部屋に入ると、怖いシンさんの顔。

私は恐る恐る部屋に入って扉を閉めるが、前方は仁王立ちのシンさんに阻まれて身動きが取れずに立ち尽くしてしまう。

沈黙した空気が流れ、ただただシュンとしていたら、シンさんの声がした。



「随分ナギと仲良くしていたんだな」

「だ、だって、夜も遅いしナギさんのお仕事が終わらないじゃないですか…っ」

「ほぉ……俺に言い訳とは、随分と偉くなったもんだな」

「…だって……」



売り言葉に買い言葉とは、この事なのだろう。

そこから、また沈黙が続いてしまう。

同部屋のシンさんには悪いと思ってはいるけど、宴の度に仕事が終わらないナギさんのお手伝いをする事がそんなに悪い事なの?と思うと、引き下がれない自分がいた。

シンさんがどんな顔をして私を見ているのか解らずに、俯いたまま時が過ぎる。

やはり、少し意地を張りすぎたかなと反省しかけた時だった。



「……あまり心配をかけるな」



そのシンさんの意外すぎる言葉に、思わず勢いよく顔を上げた。

すると、そっぽを向くシンさんの顔があったけど、よく見れば、心なしか顔が少し赤らんでいるように見えた。



「シンさん…」

「……俺がどんな気持ちで待っていたのか、知っているのか?」

「っ…!」



小さく呟くように言うシンさんの言葉に、そこでようやくシンさんの気持ちを理解できた。



「……ごめんなさい」



反省する気持ちとは反して、体はシンさんの気持ちを知ったことで熱を持つ。

赤らむ顔が恥ずかしくて俯いていると、シンさんの、私の顎に掛ける手によって上を向かされた。

そこには、綺麗なシンさんの顔が目の前にあって。




「今夜は寝かさない。覚悟しろよ?」

「えっ!?で、でも今日はもう夜も遅いですし」

「そんな時間になったのは誰のせいだ?」

「それは……。でも寝ないと、朝まであと数時間しかないんですけど」

「だから、その数時間起きていればいいだけの話だ」

「そんな無茶苦茶な;」

「問答無用。お前に逆らう権利はない」

「ッや、シンさん…!」




満月も更けた夜。

私はシンさんの嫉妬心を呼び覚ますとどうなるのか、身をもって体験するハメとなってしまった。



…の定、誰よりも遅くに起きた私たちは、いつまでも朝食が片付かないと立腹するナギさんの怒りを買った事は言うまでもない。




END.

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