贈り物小説

□festival〜たこ焼き〜
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「あ〜♪」



その声と同時に、##NAME1##はシンの手を引いて一軒の屋台へと歩みを寄せた。

近づくにつれ、何とも良い香りが強くなる。

甘いような、辛いような、実に食欲をそそる香り。

##NAME1##は、懐かしいものにやっと会えるような顔つきだったが…そんな匂いを嗅いだことのないシンは、一体その屋台には何があるのか気になってしまう。

そして、その屋台の前で足を止めた。



「…何だ、これは?」



シンの目に飛び込んで来たのは、丸く穴が空いた鉄板の上に乗った、茶色の丸いもの。

首を傾げたシンだったが、その瞬間、屋台の主人が馴れ馴れしい口調で話し掛けてきた。



『兄ちゃん!たこ焼きどうや?うちのは旨いで〜♪』

「…たこ焼き?」

「シンさんはたこ焼きを見るのは初めてですか?」

「ああ」

「そうだったんですか。ヤマトでも西の地方の名物なんですよ。中にタコが入っていて…ふわふわで美味しいんです!何と言っても上のソースが甘辛くて美味しいんですよ♪」

「ふーん」

「久しぶりに食べたくなっちゃったなぁ〜」

「何だ、食いたいのか?オヤジ、一つ…」
「おっちゃん!」



注文をしようとしたシンの言葉に割って入ったのは、今までの消極的な雰囲気をがらりと変えた##NAME1##。

曇りのない声は、主人とシンの視線を集めた…と思ったら。



「ま・け・て?」

「?!」



首を少し傾げて、可愛らしくねだるように屋台の主人に言う様は、シンとしては目を見開く光景。

可愛い恋人が、自分にもしないねだり方を、赤の他人のましてや中年オヤジにするのだから気分が悪い。

少し眉に皺を寄せて##NAME1##を見ている間、主人からも返答はなかった。

もしや、可愛い可愛い##NAME1##に恋の花を咲かせたのではないか、ならば今すぐに処分せねばと、もしもの計画を立ててるシンを他所に、警戒な主人の笑い声が響いた。




『いや〜ねぇちゃん、まいったなぁ〜!ちょっとちゃう値切り方やけど、ねぇちゃん可愛いからまけといたるわ!』

「え〜ホンマ?おおきに〜vv」

「……」




それぞれの国には、それぞれの文化がある。

それは世界中を旅したシンが、一番よく解っている。

けど##NAME1##がしたそれは、シンには初めて目にした光景で。

意外すぎた##NAME1##の一面を見たシンは、あまりの衝撃にどうやってその屋台を離れたのか、記憶になかった。


血が騒ぐのか…

どんなに故郷を離れても、蛙の子は蛙なのだろう。

##NAME1##の事は、頭のてっぺんから足の先まで知り尽くしていると思ってたシンだったが、この時ばかりは未知との遭遇であった。





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