SHORT

着信(現パロ/甘切/R18)
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『ぁー…』

「…?どうしたの…?」


腰にタオルを巻きながら立ち上がった男が不思議そうに問いかけてくる。それに『なんでもない…』と答えながら両手で顔を覆い、汗で張り付いた前髪を掻き揚げる私。



事の始まりはほんの、数日前のこと。仕事帰りに佐助と名乗る男に声をかけられた私。スラッとしていて身長が高いだけじゃなく顔も稀に見るイケメンにナンパされればそれはそれは嬉しいことで、更に私がフリーだったら嬉しさも倍増してたと思う。


『ごめんね?私彼氏居るから携帯の番号は教えられない…』

「彼氏って、一緒に住んでるの?〜ならッ!俺様からは絶対に電話しないからお願い!!番号教えて?」


タイプの男じゃなかったらいい加減しつこい!って無視するのに今回の相手がタイプだったばかりに…そう…あまりにも良い男過ぎて私ったら…。


『絶対に電話かけてこないっていうなら…教えてあげる…』


あぁ…私のバカ。

同棲中の彼氏裏切って私ったら何てことを…。

でも、自分からだなんて…電話かけられないっていうか…彼氏いるのにかけちゃマズイよね?


約束したとおり、佐助からの着信はお互いの番号を交換した時から一切なかった。だけどそれが逆に寂しく感じて…。

仕事中も彼氏と同じ時間を過ごしているときももしかしたら電話がかかってくるんじゃないかって落ち着かなくてそわそわして、淡い期待で1人ドキドキすること早3日。

そして4日目に突入。

〜♪〜♪〜♪


『ひゃっ、佐助から電話っ』


ちょうど仕事が休みで、彼氏は仕事で家には私1人。遅めのお昼ご飯を済ませたころ突然に鳴った携帯片手に電話に出るべきかどうかを悩んでいるとプツリと着信音が切れた。


『…もぅ。自分からは絶対かけてこないって言ったのに…』


嘘つき…と、テーブルに置いた携帯をピンッて指先で弾いて空になったお皿を洗いながらも薄く緩む口元。もしかしたら他に目をつけていた子がダメで私に電話をかけたってだけかもしれないけど…それでも嬉しい。

きゅッと蛇口を閉めて携帯の元へ戻ると着信があったことを知らせるライトが点滅していて、愛用の二つ折り携帯をパカッと開いて確認。


『(…うそっ。全部佐助から!?)』


しかも連続6件。

もしかして…私、気に入られてる?って待て待て。相手の顔を思い出せ私!佐助のイケメン度は過去最高レベルじゃない!私なんかが気に入ってもらえるはず…

〜♪〜♪〜♪

『わっ、またかかってきたっ!…どうしよう』


親指を通話ボタンにソロソロと持っていってはやっぱダメ、と引き返す。…でも、今家には私1人だし…久しぶりに声、聞きたいし…。

ちょっとくらいなら、いいよね…?


「…もしもし?梨花ちゃん…?」

『…ッ』

…うゎっ、どうしよう。名前呼ばれただけなのに私ってばキュンてくるなんて完全に舞い上がってる!

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