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□雨と僕らの初恋
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雨が降っている。
窓の外、今の自分の心境を表しているかのような雨雲から降り注ぐ雨を眺めながらグリーンは、雨とはまるで人の感情のようだとふと思う。
穏やかに降ったり、激しく降ったり、人の心情の変化を見ているようだ。

そこでふとシロガネ山にも雨は降っているのだろうか、シロガネ山にいる自分の幼なじみはどうしているだろうか、と考える。

自分の幼なじみであるレッドはどちらかといえば嵐の前の静けさというか、そういう感情の変化を他者に見せることのない人間だ。感情がないというわけでは決してない。感情を表すのが苦手なだけだ。
だからそれだけにいろいろと苦労したし、悩みもしたのだろうと思う。昔、まだ幼い頃、近所の大人に薄気味悪いと噂されていたのを自分は未だに覚えている。
そんな幼なじみ、レッドに最初に抱いた感情は同情に近いものだった。
ああ可哀想だな、そういう感情に親譲りであるお節介が相まって、自分はレッドに近づき友だちになった。
親しくなりわかったことだが、レッドはひどく自身のことに疎く、いつの間にか怪我をしていたり、その怪我を放っておいたりする。だから余計に自分が面倒を見てやらないと、と思うようになった(つまりは庇護欲がかき立てられたのだ)。


(それがいつからだろう、恋というものへと変化したのは)

自分を頼ってくれることに、自分だけがレッドの微細な感情の変化を見抜けることに、レッドが自分以外に友だちがいない自分しかいないことに抱く優越感もろもろは、恋という代物へと昇華していたのだ。

気づいた時にはもう後戻りのできないところまでいっていました、なんて自分のことながらバカバカしい。

つまりはこの感情は恋だと自覚した瞬間から数時間前までずっと、レッドへの片想いをひた隠しにしながらレッドと仲良くしてきたということだ。
好きであるが故につっけんどんな態度を示していた時もあるが、そこは思春期だから仕方ないと割り切ってほしい。

…ところで前述からわかるように、自分は数時間前、レッドに自分の数年間(十数年間?)に及ぶ自分の片想いに終止符を打つべく、一世一代の告白をした。

(ていうか驚いて固まるレッドなんて初めて見たような気がする)
それだけレッドにとって衝撃的だったって考えると、レッドは自分のことを恋愛対象だと見てはいなかったのだろうな、と思う。同性だし、仕方がないと言えば仕方ないのかもしれない。
けど少なからずその反応にはショックを受けている自分がいるのも事実だったりする。


レッドが固まっていたので、頭の整理が出来てからでいいと返事を先延ばしにしたのは自分だとはいえ、レッドがどう返事をするかが気になってたまらない。
はい、がもらえる可能性はレッドの様子からしても低い気がする。このまま自分の初恋はふられて終わるかもしれない。

でも今更友だちには戻れない。

だって自分は、恋と自覚した瞬間からレッドを友だちとは見ていなかったから。断られて、はいそうですかと割り切れるほど大人ではない。

(というかあまりそういうことは考えたくない!!縁起が悪いっていうかなんていうか)

頭を押さえて一人悶えているとドンドンと何かを叩く音がする。
音のする方へと目をやると、玄関の方、ドアを誰かが叩いている。

(わざわざ叩かなくてもチャイムがあるのに)

そう思いながら椅子から立ち上がり、はいはいと言いながらドアを開くと、そこには今まで自分が考えてていた人物が立っていた。

「れ、レッド!?…って!!お前なんでずぶ濡れなんだよ!?傘は!!」

「……」

傘をさしていないせいで全身ずぶ濡れのレッドに、自分がさっきまで考えていたこともレッドが突然ここに来た理由を尋ねることも忘れて、レッドを家の中に入れようとするグリーンの腕を突然掴む。

「?レッド?」

「……き…だ」

困惑するグリーンに、顔を俯けながらぼそぼそと何か呟くレッド。レッドの言葉を聞き取ろうと、グリーンはレッドの口元に耳を近づけた。その瞬間レッドはバッと顔を上げた。
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