drrr novels
□コールタールのような
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※電波注意
※青♀帝
※六巻ネタバレ要素あるよ!!
その顔を地面に叩きつけて、踏みつけてやりたい。
目の前で嬉しそうに、俺の愛しい人の名前をだす男。廊下ですれ違った彼の人に一目惚れをしたというそいつは、自分の心の内をベラベラと話していた。その男の所謂クラスメートな俺はその話を聞かされながら、目の前の男への怒りにも似た、怒りよりも質の悪い感情を抱いていた。
顔を先輩への好意に染めた男の唇が動く。
「竜ヶ峰先輩って」
可愛いよな。
華奢で色白で、特別美人ってわけじゃないけど目もパッチリしてて可愛いし。
うるさい。
なにより笑った時の――――――――――。
だまれ。
ニコニコ、ニコニコ、笑みを顔に貼り付けながら男を心中で嘲笑い罵る俺に気づきもしない馬鹿な男は、その汚らわしい口から帝人先輩の名を呼ぶ。
何も知らないくせに。
帝人先輩がどんな人で、どんな物が好きで、どんな風に笑うのか、何ひとつとして知らないくせに。傲慢に帝人先輩について話すそいつを痛めつけてやりたい。そして帝人先輩は誰のものか、どれだけそいつが帝人先輩に相応しくない存在であるかを身をもって知らせてやりたい。
包帯の巻かれた手を握りしめる。未だ傷の治らない、治ったとしても永遠に傷痕を残したままであろう、包帯の下の帝人先輩と俺の繋がりの印を。
俺だけが、知っているのだ。
あの人の冷酷な顔を。純粋であるが故に狂気である、その穏やかな人柄に内包される残酷さを。
今までも、そして今も、他の誰も知りえない帝人先輩の一面を、俺は知っている。
俺の手にボールペンを突き刺したその瞬間に、俺と帝人先輩は他者からの関与など意味を為さない崇高な繋がりを得、他の人間となんかの繋がりよりもずっと、遥かに強く結ばれたのだ。
そしてその傷が永遠に残ることで、俺と帝人先輩を結ぶものは永遠となる。
そう思った瞬間、作り笑いが剥がれてしまいそうになるほどの歓喜が沸き上がった。
同時に目の前の男への同情心も。
お前がどれだけ帝人先輩のことを好きであろうと、帝人先輩がお前に振り向くことはない。その不毛な片想いは実らない。永遠に。
そんな脆弱な感情など、簡単に崩れてしまうだろう。
(なーんにも知らない奴は、黙って指をくわえて見ていればいい)
だって帝人先輩の全てを知っているのは俺だけで、あの人の全ては俺のもの。
お前なんかが立ち入る隙などどこにもないのだから!!
コールタールのような
(嫉妬心は愛の証)
20110308
にょた帝人の意味がない。