対照な春と夏

□素直になれない
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果てなく続く空の澄んだ瞳。
すっきりと通った鼻筋。
綺麗に三日月を描く口元。
それらがバランス良く整った顔立ち。
真夏に咲く、大輪の向日葵の金髪。

容姿も最上に良いうえ、名門貴族ヴァインベルグ家の四男坊で、皇帝直属の騎士
ナイトオブスリーというこれまた最上の身分。
誰にでも平等で人懐っこい性格は、人として一番好かれるものだろう。



それら全てを兼ね備えたジノ・ヴァインベルグがモテないはずが無く。
現にジノがこのアッシュフォード学園に来てからというもの、女子は皆色めき立
ち、『ジノ様親衛隊』なるものまで誕生していた。





だから。

ちょっとした、悪戯だったのだ。


自分が、学園一のモテ男ルルーシュに興味をしめしたら、彼はどんな風に反応するのだろうか。



それが、知りたかった。



欲しかったのは、いつもの様に騒がしくまとわりついてくる大型犬のような彼。

でも、









『アーニャはルルーシュのことが好きなのか?』



耳奥に焼き付いた、悲しげな声。
目の奥に映った、悄気た子犬のような姿。



違う

違う、違う



私が好きなのは、あなた。



そう素直に返してしまえれば、どんなに良かったか。

そう。



素直になることが、何よりも出来なかった。
心の全てを曝け出すということが、どうしても出来なかった。

それが自分の元の性格なのか、ある日突然始まった、時々記憶が抜け落ちる現象によるものなのかは知らない。






そんな中、今日のイベントは、素直になれない私にとって、最高にちょうど良い
ものだった。

でも、私はまた…


正しい道は、ジノの元に行って帽子を差し出すことだったのに。
まとわりつく女どもを軽くあしらって楽しんでいる彼を見て。


何とかして気を引きたくて。



ナイトオブシックスとしての職権濫用の結果は、スザクとギルフォード卿に迷惑を掛けただけ。





全て終わって、ルルーシュとシャーリーが祝福されている。
私は、それをめでたいことなどとは思えなかった。

自分が悩んでいるときに幸せなカップルが出来たところで、苛々の原因にしかならない。

妬みという、醜い感情が浮かび上がってくる。


全て吹っ切るかのように、私は目をきつく閉じ、頭を左右に振った。
これで少しはすっきりする。


しかし、目をあけて最初に飛び込んできたのは


ニカッと歯を出して笑う、今最も見たくない彼のアップだった。
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