聖書と天才
□苦労をかけ(られ)る日
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中学生と高校生が鎬を削る、U-17合宿。
広々とした敷地内に最新の設備が整い、外界と断たれたここは、テニスに専念するに持ってこいの場所だった。
俺、幸村精市も、更に上を目指し仲間と共に技術の向上に努めていた。
常に緊張感のある環境と、力がついていくのが実感できるハードな練習。
そして、その合間の仲間でありライバルである者たちとの楽しい時間。
真田は「そんなものいらん!練習あるのみ!」なんて言ってたけど、俺はそういうのも全部ひっくるめてこの合宿に満足していた。
ある一点を除いて。
■苦労をかけ(られ)る日■
(俺に突っ込ませるなんて、いい度胸だな!)
「んじゃおやすみ、幸村くん!」
「おやすみなさいっす、部長!」
「ああ、おやすみ」
風呂上がり。
ブン太と赤也と別れた俺は、今泊まっている201号室の前に立った。
ここからが、所謂運命の分かれ道。
明日しっかりと練習に臨めるかどうかは、これからの展開にかかっている。
合宿初日。
同室になったのは、青学の不二と四天宝寺の白石だった。
上手くやっていけるか心配だったが、それも最初だけ。
三人とも植物が好き、という共通点があり、直ぐに親しくなった。
そして、二人が付き合っているという衝撃のカミングアウトを受けた。
俺は別に、そういうのに偏見はない。
二人がいいならそれでいいし、心から応援してあげたい。
…からかうのが楽しそうだ、とも思ったけど。
しかし、二人の関係は俺の想像する恋人像からかけ離れていた。
不二の態度が、本当に素っ気無いのだ。
恋人である白石より、俺や菊丸に対しての方が甘い気がする。
白石のいないところでからかうと面白い反応をしてくれるし、不二もちゃんと彼のことを好きなんだろう。
それでも、ツンデレのツンの割合が半端ない不二に構っては突き放される白石を見てると、雨の中に捨てられた仔犬を見ているような、哀れみの感情が浮かんでくる。
面白いからいいけどね。
…とまあ、そこまではいい。
それは白石と不二の問題だし、ぶっちゃけ俺には関係ないことだ。
…本当に、そこまでは良かったのだが…
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