聖書と天才

□嘘つき
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青学の焼肉パーティーに四天宝寺・六角・比嘉・氷帝が乱入し、各校の誇りと焼肉への熱き思いによりカオスな戦場と化した焼肉店。


勝負は乾特製タレによって強制終了したが、やりたい放題やらかした店内の清掃を命じられ、やっと終わったのが午後10時。


それぞれ宿泊先に戻るため、お互いに別れの挨拶を交わしていた。


「いやぁ、今日は最高に楽しかった!」

「青学、決勝がんばれよ」

「相手が常勝立海大やからなぁ…」

「ま、精々頑張ることだな」

「もち、俺らに敗れてきた君たちの分まで頑張るから応援してにゃ♪」

「菊丸…(イラッ)」


どんなに激しい試合を展開しようと、コートをでれば同じテニスを愛するもの同士。


ふざけた小競り合いはあるものの、和やかに言葉を交わし、連絡先を交換している者もいた。


中でも、中心となってぎゃいぎゃい騒いでいるのは、やはり浪花の『お笑いテニス』四天宝寺。


特にユウジの巧妙なモノマネはやんややんやの歓声を浴び、みんなが(わざとかなり強く)投げつける小銭を相方の小春と共に痛みに呻きながらもかたっぱしから拾い続けていた。



しかし、謙也は常に完璧なツッコミをする部長がその輪の中にいないことに気がついた。


不審に思い見渡すと、少し離れた場所にいる白石を見つけた。


「おーい、白石?」

「……」

「白石〜」

「……」


気づいているのか、無視しているのか。


白石は全く反応せず、一点を見つめている。


「おい、白石!」

「わっ!なんや、耳元で大きい声だすな!」


耳元で叫んでやっと返事を返した白石に、謙也は

「さっきからずっと呼んどったやん」

「…ぼーっとしとったわ、すまんな」

「なんや、珍しいな。お前がボケーっとするなんて…」


そういって、何気なく白石の視線を追うと。


金太郎が誰かにまとわりついている。


その相手は――不二周助。


馴れ馴れしい金太郎の態度に、不二は戸惑っているようだったが、西の超一年生との交流を喜んでいるようでもあった。


「不二と金ちゃんか。…ダイナミックで野性的なプレイの金ちゃんと、しなやかで華麗なプレイの不二。二人が直にやりあったら、どっちが…」


そう呟きながら白石の方に向き直り、


…直ぐに不二たちの方に顔を背けた。


「し、白石…」


白石の全身からは謎のオーラが吹き出し、顔は鬼の形相で、金太郎を睨み付けている。


そんなこととは露知らず、金太郎は何事か不二に頼み込んでいるようだった。


「――とア―――してや!不二――と―――」


騒がしくて断片的にしか聞こえないが、せがむ金太郎に不二はにっこりと微笑むとおもむろに携帯を取り出し、いくつか操作した後金太郎の携帯と向かい合わせにした。


つまり、それは。


(赤外線通信…連絡先交換かっ!…金ちゃんのヤツ、やりおるな…)


金太郎が不二にベタベタしている――これこそが、先ほどからの白石の苛々の原因だった。
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