聖書と天才
□遠距離恋愛的バレンタイン
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バレンタインデー、それは恋人たちの祭典。
ある者はチョコの甘さに涙し、ある者はチョコの苦さに涙する。
そんな日の夜の、あるカップルの話。
♪〜
「もしもし」
『あ、俺や』
「うん、着信音でわかったよ」
『今、時間ええ？』
「大丈夫。爪切ってるけど…」
『チョコ、ちゃんと届いたか？』
「朝イチで届いたよ」
『味は？』
「凄く美味しかった。無駄に甘過ぎも苦すぎもせず、まさに完璧なトリュフチョコだったよ。ご馳走様」
『お気に召したようでよかったわ。結構時間かかったからなぁ』
「僕のは？ちゃんと届いた？」
『おん。学校から帰ってきたら届いとったわ』
「で、どうだった？」
『八個中七個はむっちゃ美味かったで。中にラズベリーソースが入っとってな。でも、一個凄いのが入っとった』
「ああ…あれね」
『あれは何なん？舌が死ぬかと思ったわ』
「…別に、嫌がらせじゃないよ。ただ、君の好みがよくわからなくって。取り敢えず自分が美味しいと思うように作ってたら、思わず七味に手が伸びちゃって…」
『……』
「そしたら、途中で姉さんに止められちゃってさ。普通のチョコの作り方を教えてもらって、八個作ったんだ。でも、包装段階で一つ入れ替わっちゃって…」
『あの、中にびっしり入っとった赤い粉はやっぱり七味やったんやな』
「それだけじゃないよ。チョコにもばっちり練りこんである。ピリッと辛くて、美味しいと思うけどな」
『…あれはピリッちゅうレベルやないで』
＊＊＊＊＊
「時に、白石」
『ん？』
「女の子から、チョコ貰った？」
『まあな。結構な数もろうたけど、ちゃんと付き合っとる奴がおるって伝えたしな。貰ったチョコは、うちの部員らに配ってしもうたわ』
「勿体ないなぁ。せっかく貰ったのに」
『不二くんは？たくさん貰ったんやろ？』
「それなりに。気持ちはちゃんと貰ったから、チョコは溶かしてチョコケーキでも作ろうかなって思ってる。今週末は裕太も帰ってくるしね
あ、大切な人から貰ったのはちゃんと食べるよ？君のも」
『俺以外の大切な人って…手塚くん!?手塚くんか!?』
「…手塚には貰ってないよ。あげたけど。ホワイトデーにお返し貰うんだ。そうじゃなくって、姉さんとか、佐伯とか…」
『佐伯？』
「あの、六角の…」
『…ああ、あの無駄にイケメンな奴か』
「そうそう」
『何でまた、あいつに…』
「あれ？言わなかったっけ？幼なじみなんだよ、僕ら」
『…へぇ、そうやったんや』
「うん。ファーストキスの相手だし」
『へぇ、そうやった…って、ええぇえぇえぇえーーーーっ！』
「耳元で大声出さないでよ、鼓膜破れる…」
『それどころやない！なんや、ファーストキスって！』
「ちっちゃい頃、ほんのお遊びでね。怒んないでよ」
『くそぉ！許さへん！不二くんの味を知っとる奴が他にもおるなんて！』
「向こうはもう忘れてるって…」
『いや、まだ覚えとる！絶対、その佐伯っちゅう奴は不二くんのこと狙っとるで！』
「ないない、ただの友達だよ」
『…とにかく、手塚くんと同じ、いやそれ以上に要注意人物や。不二くん、気ぃつけるんやで』
「はいはい」
＊＊＊＊＊
「へっくょん！」
「んー？サエさん、風邪？」
「いや…風邪ひいてないと思うけど…」
＊＊＊＊＊
『…なんやかんやで喋っとったら、もうこんな時間になってもうたな』
「あ、もうこんな時間だ。明日朝練だからなぁ…」
『じゃあ、今日はおやすみ…あ』
「？どうかした？」
『ずっとバレンタインの話しとったやろ？』
「うん」
『…チョコをちょこっと貰う、なーんて』
ツー、ツー、ツー…
東京：「…寒過ぎるよ、白石…」
大阪：「うう〜、不二くん！これはスベリ芸ゆうてな、ツッコミ期待しとったんやで〜」
→あとがきと言う名の言い訳