聖書と天才
□恋獄に堕ちる雨
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触れるだけの温もり《side.S》
不二に頼まれ、今日と明日、二日間大阪を案内した白石。
友人として、家に泊める約束もしていた。
不二にしてみれば、遠方の友人宅に泊まるだけの話だが。
白石は、不二のことが好きだった。
綺麗で優しい彼の全てが欲しかった。
そんな彼が、白石のベッドで細くしなやかな肢体を投げ出し、人形のように眠っている。
慣れない街を長時間歩いたことで、余計に疲れていたようだ。
起きているときはクールで大人びた印象を与えるが、瞳を閉じると幼くあどけなさが目立つ。
白石は自ら毒手と称する利き手でそっとその頭を撫でた。
「ん…」
擽ったそうに悶える不二に、白石は微笑みを浮かべる。
そして、衝動的に
薄く白い唇にふっと自身のそれを優しく押しあてた。
はっ、と我に返り、屈めていた上体を正す。
(アカンアカン、何やってんねや!)
ふと指をあてると、まだ唇が熱い。
あの潤った唇の感覚が蘇ってくる。
白石にとっては、初めてのキス。
勝手に口付けた罪悪感は、一瞬で消え去って。
やがて身勝手な喜びが込み上げてきた。
熟睡している不二は、起きている様子はない。
それをいいことに、白石はもう一度頬にキスすると。
「んんーっ、絶頂…」
小声で口癖を呟き、今の余韻に浸った。