鮮血のように真紅の花を

□天然な君に気付かせるには
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とりあえず、一回起きようと、手を動かすが…動かない。


手に当たる、金属の冷たい感覚。



上を見ると、両手が手錠で繋がれ、動かせなくなっていた。



「え…何これ…?」

突然の事態に、頭が困惑する。


まさか、ルルーシュとナナリーの正体を知るものが襲撃してきたのだろうか?


だとしたら、一刻も早く彼らを助けねば。





「起きたのか」



テノールの響いた方向を見ると、いつの間にか、ベットにはルルーシュが座って
いた。


「ルルーシュ…、これは、何の真似だ…?いったい、何が…」


僕の問い掛けに彼はクスリと笑うと


「スザクが、逃げて何処かにいかないようにだよ」

と答えた。


「…ぁ…これをやったのは…、君なのか…?」

口から零れた、信じがたい疑問。


願いとは裏腹に、彼は微笑を浮かべたままゆっくりと頷いた。


「ど…して…?」

「言っただろう?逃げてどこかに行かないようにって」


逃げていく?何から?

「なに…言ってるの…?」


「わからない?」

ルルーシュの微笑みが消えた。



僕が頷くと、

「お前は、軍に行くとき、軍に『戻る』っていうよな?」

「え?」


無意識のうちに言っていただろうか。覚えていない。
それに、そんな些細なこと…


「…そんな……こと?」

「そんなこととはなんだ!?」




ルルーシュの端正な顔が歪み、憤怒の表情へと変わる。


「スザク。軍がお前の居場所なのか?俺やナナリーの傍ではなく、お前の祖国を奪い、俺たち兄妹を見捨てたブリタニアの軍が!?」


「……」


少し考える。でも…




わからない。

僕は、ルルーシュやナナリーの傍に居て――いや、居なくても、2人が安全に、


平和に楽しく笑っていてくれることが望みだ。



そのために彼らを護りたくて、今でも軍にいる。



そして、軍にはロイドさんやセシルさん、ユーフェミア殿下がいる。

厳しくも優しく、暖かい人たち。



学園とは、ルルーシュとナナリーの傍とは、また違う居場所。

その日溜まりは、自分にとって失いがたいものになっていた。


だが、それをつげれば、ルルーシュは…



「答えられないだろう?」


長い沈黙を肯定と受け取ったらしいルルーシュの手が、優しく僕の頬を撫でる。
わけもわからずされるがままにしていると、その細長い指が唇に触れた。

冷たい指先が、唇をなぞる。


「ルルー…シュ…」


「スザク。今から教えてやろう。お前が誰のものか。お前の居るべき場所が何処
なのかを…」

小さく、低い声で囁かれる。

その刹那、背筋が震えたのは、期待か、歓喜か、恐怖か。

「すまない、スザク…」


そしてそのまま…吐息を奪われる。


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