鮮血のように真紅の花を

□君に秘める罪
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ソファに身を沈め、優雅に足を組む男。


その服装から、高貴な身分の者だと見て取れる。


憂鬱気に艶やかな黒髪が髪にかかり、端正な顔を隠している。


彼の左右には、媚びた笑顔を見せる女たちが4人ほどつき従い、彼の機嫌をうかがっていた。


シックで落ち着いた高級感のある部屋に、女たちの派手な露出の多い服は目立つ。


男――この屋敷の主人であるゼロは、彼女らをはべらせながら、今夜の相手を品
定めしていた。




「失礼します」


ノックと共に、妾ばかりの屋敷で主人の他唯一の男が入室する。


天使の羽根の如くふわふわな茶髪と、悲しげな碧眼。


しなやかな細身の躰に、黒い執事服を身につけ、

その存在だけで、ゼロとは違うリアルな色香を醸しだす。


「遅いぞ、スザク。私が命じたら、5分でくるよう言ってある筈だか?」

「……申し訳ございません、旦那様」

「まあいい。それをこっちに持って来い」

「はい、旦那様」


広いこの屋敷は、厨房からここ、ゼロの執務室まで10分。


ゼロに命じられたように湯を沸かし、紅茶をつくれば、ゆうに20分以上はかかる。


しかし、どんな理不尽な命令も、主の言葉は絶対遵守。


5分と命じられたなら5分、1分と命じられたなら1分。


実行出来ないのなら、甘んじて罰を受けなければならない。





主の下へ慎重に盆を運ぶ。


その歩みの先にゼロはすらりとした足を投げ出した。


「あっ」


ゼロの狙い通り、スザクは足を引っかけて前のめりに倒れこむ。


盆はスザクの手を離れ、ティーポットがゼロに直撃する。


バシャッ


頭から紅茶を被り、黒髪からは紅茶が滴って服には染みが出来ている。


「ゼロ様ッ」

「大丈夫ですか!?」

「この…ゼロ様になんという辱めを!」

「下劣なイレヴンめ!」

「も…申し訳ございません!今何か拭くものを…」


スザクが布巾を持って来ようと部屋を出ようとするが、ゼロがその手首を掴む。


「その必要はない」


静かに呟くと、三日月に口元を歪め


「舐めろ」


紅茶のかかった革靴を、スザクの方に突き出す。


スザクは一瞬表情をかためたが、


「旦那様の仰せのままに」


ゼロの革靴を手で掬い、そっと口を寄せる。


そして、真っ赤な舌を使ってペロペロと舐めはじめた。


革靴独特のにおいが気持ち悪い。


女たちはスザクを軽蔑の視線で見ては、顔を見合わせクスクスと嘲笑を漏らす。



スザクの頬は羞恥、そして恍惚から朱に染まっていく。



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