鮮血のように真紅の花を

□悪夢の再来、あるいは盤上の道化師たちの休日
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ゼロの亡命、中華連邦での反乱、激しく揺れる政治情勢なんてなんのその。
アッシュフォード学園は、今日も今日とて平和です。






生徒会室の隅に蹲る黒い影。
それは、メイド姿の美少女――





…と、言いたいところだが。
実際にメイド姿を披露しているのは、ルルーシュ・ランペルージ、本名をルルーシュ・ヴィ・ブリタニア、またの名を世間を騒がすゼロその人だった。

つまり男性である。


とは言っても、もともと中性的な整った顔立ちをしている彼は、鬘をかぶって髪を長くしただけで十分女性として見えるほど。
ぱっと見、メイド喫茶で働くプロのように完璧なメイド姿だ。

しかし、当の本人はそれを喜ぶどころか、拳をわなわなと震わせ、必死に怒りを抑えていた。
男として、当然といえば当然の話だが。


「くっ…醜態だっ!大体、なんで俺がこんな真似を…」
「まーまー、会長命令じゃ仕方ないっしょ」


完全に諦めた表情で呟くのは、アッシュフォード学園の(女生徒の)制服をきたルルーシュの悪友、リヴァル・カルデモンド。
ちなみに、女装は全く似合っていない。

化粧も無駄にけばけばしく、完全にお笑い要員となっている。


「くそっ…なんでまたこんな」
「ジノのアーニャの歓迎会の、ちょっとした余興じゃん?そんな嫌がんなくても…」
「(ちっ…あの二人さえいなければこんな馬鹿な祭りを再びやる羽目になど…!)」


蘇るのは、前回の男女逆転祭での屈辱。
あのときはナナリーのため、と我慢できたが、今はその最愛の妹がいない。

ゼロとしてもナイトオブラウンズの彼らは忌々しい存在だが、まさかこんなところでも悪影響を及ぼされるとは。
あの時倒せていれば、と、つくづく中華連邦での一見が悔やまれる。

ルルーシュは、小さくも深いため息をついた。





「じゃんじゃじゃーん!アーニャ完成!」


ルルーシュとは対照的に、ハイテンションで勢い良く飛び込んできたのは、この騒ぎを起こした学園の支配者ミレイと編入生の一人でナイトオブシックスのアーニャ・アームストレイム。

ミレイはいかにも、という暴走族スタイル、アーニャは暑苦しい応援団長スタイルで、額には必勝と書かれたハチマキをしている。
小柄なアーニャには裾があまり少しだぶだぶだったが、見る人が見ればその裾から見え隠れする小さな手などが非常な萌えを演出するのだろう。
例えば、あの大型犬のような男などは。

しかし、生憎とルルーシュは全く彼女に興味がない。
それよりも、奥からまもなく出てくるであろう人物を心待ちにしていた。



(元)恋人、枢木スザク。
ルルーシュを皇帝に売り、その自尊心をズタズタにした張本人だ。
接して許すことの出来ない敵でありながら、しかし愛憎というのは表裏一体なのか、憎めば憎むほど彼への愛情が増していく。

きっちりと着こなした騎士服や身体のラインを強調したパイロットスーツに、仮面の下で鼻から赤い液体を零すこともあった。
そのたびに、共犯者の魔女や親衛隊隊長に呆れられているわけだが。


そんなことを考えている内に、奥の扉が開いた。
そこにいる人物に、ルルーシュは息を飲んだ。
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