全ての愛を君に捧ぐ

□first contact
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かんかん照りの太陽の下。


「あっつ〜、…あ」


手塚と並んで昼食をとっていた不二は、自分の飲んでいた麦茶が無くなっていたことに気がついた。
今日は間もなく関東大会準決勝。全国大会への切符がかかった一戦だ。
二年生ながら、先輩を抑えて「天才」と呼ばれる不二にもおそらく出番があるだろう。
そうでなくとも、こんなに太陽が張り切っちゃってる日には水分は必要不可欠。
あと10分ほどで臨戦態勢に入るが、まあ、それまでには間に合うだろう。


そう考えた不二は、ちらっと手塚のペットボトルの中身の残量を確認すると


「手塚。僕自販機までいってくるけど…飲み物買ってこようか?」
「え?ああ、そうだな…お前と同じものを頼む。お金は後でいいか?」
「りょーかい」


不二はそう言って、財布を片手に自販機へと向かった。












少し離れた、他校生が休憩しているあたりの自販機。
本当はもう少し近い場所にもあるのだが、こっちの方が種類は豊富だ。


(うーん。手塚のことだから、お茶がいいのかな?でも、この後試合だし…うん、スポーツドリンクのほうがいいよね)


一瞬迷ったが、小銭が無かったために1000円札で500mlのスポーツドリンクを2本買う。
種類の豊富さからこちらの自販機を選んだのに、結局ありきたりなものを買ってしまい、不二は誰ともなく苦笑した。


時計を見ると、あと6分で最終ミーティングが始まる。
慌ててペットボトルを2本抱え、財布をもって駆け出す。

そのとき





「不二くん」





涼やかな、聞き覚えの無い声に呼ばれた。
振り向くとそこには。


ウェーブがかった藍色の髪とミルクのような白い肌は、神秘的な美貌を醸しだしていて。
そして、トレードマークのヘアバンドと肩に羽織った鮮やかな黄色いジャージ。


「立海の幸村…くん」
「ふふ。呼び捨てでいいよ。はい、これ」


差し出された手の中には、500円玉一枚と、100円玉二枚。

もしかして。


「試合では隙のない天才も、こんなところではうっかりしてるんだね」


そう言って、またふふ、と笑われた。
やっぱり。自販機におつりを忘れてしまっていたようだ。
700円とは、急いでいたにしても忘れるには随分と派手だ。


「ありがとう。…ネコババしちゃえば良かったのに」
「俺が、そんなことするように見える?」
「まさか。冗談だよ」


怒ったようなそぶりをみせる幸村に、不二は笑顔でフォロー。
だが、幸村は顔を背けた。

あの一言で、そんなに怒らせてしまったのかと、不二は不安になる。


「あの、幸村くん…?怒った?」


そう言って顔を覗き込むと、幸村の顔は真っ赤だった。


「幸村くん?」
「あ、全然気にしないで。怒ってないし」
「そう?良かった」


幸村の微笑みに、今度は不二の心臓がドキッと鳴った。
そこいらの女性とは比べ物にならないほど綺麗な笑顔で、神々しい輝きすら見えていた気がする。
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