かげろふの道--童歌--

□sprinter
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俺の行く道に君はいるのかな?



君の瞳の中に俺という存在は写りこんでいるのかな?


sprinter

ありきたりな質問だけど、

高校の入学式、と聞いてあなたは何を思い出しますか?




人それぞれではあるとは思うけれど、

仲の良い友達と同じ学校に進学出来て嬉しい、とか


これからの学校生活にわくわくしている、とか




不安や緊張と同じ位の好奇心と希望を持って臨む人が多いだろうな、と思います。



でも俺は違ったんです。





基本的に内気で体が弱く、友達も少ない。

こんな人間が高校で上手くやっていけるか?


いいえ、出来る筈がないんです。



今すぐに逃げ出したい、

カッコ悪くてもいいから、とにかく逃げたい。


そんな思いでホームに立つ他なかった。


そもそも逃げ出しても現実世界で良いことが有るわけでもなしに、俺はすぐに“逃げたい”と考えてしまう………。



悪い癖です。




沈んだ気持ちとは裏腹に、朝日が嘲笑うかのように、ホームを照らしていました。


ふと目を上げると向かい側のホームに真新しい制服を着た、恐らく同い年の女の子が立っていました。


彼女からは凛とした雰囲気が周りに漂っていました。



黒い髪がなびいて、駅の外に咲いている桜が舞い込んできます。


それでも彼女は何もせず、ただ凛として立っているのです。


それはもう、息を飲むほどに眩しかった。



今、背中を丸めて立っている自分。



今、胸を張って立っている彼女。


この駅に居る、同い年の子と自分はこんなにも違う。



見せつけられたようでした。





俺は先程まで逃げたいと思っていた自分がとても情けなく感じました。



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