茶室

□竹林の狐
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――昔のまた昔。
妖怪たちの間で、争いが絶えなかった時代。そこに戦いで傷ついた妖狐は人里離れた竹林を意識が朦朧としながらさ迷っていた。

だが、竹林の中にお粗末な民家がぽつりとあるのを見つけ、進路を変えようとしたが、突然視界が暗くなり倒れてしまった。

その音で民家から、年若い娘が出てくるのを最後に暗黒の世界に包まれた。





―ふっと暗闇の中で目を覚ました琳は、何も見えない中で目を動かし辺りを見回した。


段々闇に慣れた目は、自然と祖母が生前寝ていたと思われる場所にそそがれた。

祖母の夢を見ていたせいだろうか。昔からずっと言われていたことを思い出した。




『いいかい、琳。この竹林の奥には妖狐様が住まわれているんだ。
決して奥には行ってはならないよ?行ってしまっては、妖狐様のお怒りを受けることになるからね』


そう幼い私に言い聞かせていた。毎日のように言われていたせいか、本当に行ってはならないんだなと幼いながらに、理解し、いつも竹林の手前で立ち止まっていた。

視線を天井に戻し、再び眠ろうとするが目が冴えてしまい、眠ることは出来ないようだった。


琳はひとつため息をついて、のそりと起き上がり、肩より長い黒髪が起き上がった体に後からついてき、ゆらりと揺れてから静止した。




まだ、朝日は山から顔を出さずほの暗い空だった。幾分か早い時間帯だったが、琳は立ち上がり井戸に向かった。


外は、夏から秋に変わりはじめ涼しい気温だった。
清々しい朝は気持ち良く、伸びをしてから、水を汲み、顔を洗い朝食の支度をし始めた。
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