Novel
□待ち人来たり
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太陽が今、一番高い位置にある。
絵に描いたような綺麗な青い空。
白い雲がゆっくりと流れていく。
写真の世界のようだ。
屋上の手すりの上で腕を組んで、風を感じるのが気持ちいい。
ちょっとした気分転換には十分だ。いつもなら屋上の更に上のあの場所で寝ているはずのアイツがいない。
きっと・・・・家の用事なんだろ。
「なんだかなー・・・・」
そう呟きながら、手すりに背をむけ、肘を手すりにのせ、いつもアイツがいる場所をながめてみる。しばらくして、手すりに持たれかけていた体を起こし、歩き出す。
屋上より更に高いあの場所。
はしごに足を掛け、のぼりはじめる。
ひょこっと顔を出しても、やっぱりアイツは居ない。
いつもココで寝ているアイツのように、座ってみる。
そして、仰向けになって横になってみた。
ココに来たって碓氷に会えるわけじゃない。そんなの分かっている。
でも、少しでもアイツの温もりがある場所に居たいと思った。
昨日今日とアイツが学校に来ていないだけなのに、こんなにも穴が開いたかのような空虚感をかんじるなんて・・・・
明日には来るかもしれないのに。こんなにも寂しいと思うのは、きっと・・・・・
――――俺のこと好きで好きでしかたないんでしょ?―――
碓氷の言葉が頭をよぎる。少し顔が赤くなるのが自分でも分かる。
「ふぅ・・・・・・悔しいが、きっとそうなんだろうな・・・・・・」
一人呟いて体を起こすと、校門から一人の生徒が歩いてくる。
どんなに小さく見えても、離れていても、分かる。
「今、何時だと思ってやがる・・・・・・」
そう言いながら、5時間目が始まるまで30分弱。
ココで、碓氷が来るのを待ってみるのも悪くない。
でも・・・・私の小さな意地。簡単には捨てられない。
ココに来るまで5分くらい。
それまでに赤くなった顔を治そう。
早くなる心臓の音を静かにしよう。
落ち着け・・・・・・いつもどおり、いつもどおりの私を・・・・・・
碓氷が来るまであとちょっと。
偶然を装って。あの扉が開いて、ココに来るまでに・・・・・・・・・・