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□不幸少女2
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 フレン・シーフォにとって二人の幼馴染みは手の掛かる子供のようなものである。不本意ながらではあるが、自他に認める程最近は母親役が身に付いてきたような気がしてならない。せめて父親にして欲しいところだ。いや、どちらも願い下げなのだが。


不幸少女2


 そもそもの原因はほぼユーリにあると言ってもいい。彼の素行は真面目とは程遠く、昔からフレンの頭を悩ませていた。いや、この時点でおかしいことに気付くべきなのだが。
 もう一人の幼馴染みはユーリのように素行が悪いわけではない。むしろいい方だ。しかし問題は彼女の素行云々の問題ではなかった。不幸少女と密かに呼ばれて
いる彼女は文字通り不幸を呼び寄せる。他人に害を与えないのが逆にタチが悪い。
 そんな二人を見て注意を払ってきたからフレンは二人の保護者と化してしまった。
 自身の過去と現在の立ち位置に溜め息をつきながらも、フレンは書類から目を離した。生徒会長の役職についてからというもの、フレンの忙しさは倍増する一方だ。別に生徒会の仕事は自分から望んだことである分苦にはならない。書類の大半がユーリ関連なのはこの際おいておくことにする。いや、むしろユーリさえ大人しくなれば書類の数もフレンのユーリへの負担も減るのではないか。あぁこれが一石二鳥と言うやつか!

「……疲れているのかな」

 なんだかおかしなことを考えたような気がする。
 それにしても呼んだはずの彼女がいつまで経ってもこない。……いや、まさか三年生の教室と生徒会室は同じ階にあるのだから、そんな短い距離でドジをふむはずが無い、とは言い切れない……。彼女の場合は。
 もうすぐ昼休みが終わってしまう時間だ。捜しに出ようとフレンが立ち上がったその時、廊下が騒がしくなった。

「え、ちょっと大丈夫ですか!?」
「おい、三年の先輩が転けて壁に顔面強打したぞ!」
「先生呼べ! 先生!」

 弾かれたように生徒会室から出ると、一直線上の廊下に人だかりができていた。
 反対側からユーリが走っているのも確認できる。どうやら考えたことは同じだったようだ。
 周りに群がる生徒に教室に戻るよう促すし、何やら言い合っている幼馴染み二人に目を向ける。

「わ、わざとじゃないんだよ!」
「わかったから保健室行くぞ!」

 この会話も何回見たことだろう。未だ言い合っている二人の名を呼べばピタリと彼女の動きが止まった。

「フ、フレン君……」
「ユーリ、彼女は僕が保健室に連れていく。君は教室に戻れ。」
「いいのかよ、生徒会長が授業サボってよ」
「それよりもユーリの出席数の方が危険だろ。卒業できなくても僕は知らないからな。」

 さすがに卒業できないのは困るのか、彼女と言葉を交わしてから教室へ戻っていった。そこで丁度予令が鳴る。行こうかと声をかけると彼女はフレンの隣に並んで歩き始めた。

「付き合わせてごめんね、フレン君……」
「気にすることないよ。それに一人で行かせてまた転けられても困るしね」
「あたし、そんなドジじゃないよ!」
「それは一日の中で一回も転けなくなってから言おうか」

 一度大丈夫だと言った彼女を一人で保健室に行かせたことがあった。案の定教室に帰ってきた彼女の怪我は増えおり、それ以来保健室に行くときは怪我を増やさ
せまいとフレンかユーリが着いていくことになったのだ。その事を思い出したのか、彼女はばつが悪そうに目を逸らした。ただ不服なのにはかわりないらしく、その口は尖っている。

「フレン君って、意外と意地悪だよね」
「僕だって伊達に二人を相手してきたわけじゃないからね」

 唸る彼女を言いくるめて保健室に入る頃には始業のチャイムが昼休みの終わりを告げた。



(「帰りも転けないようにもっとゆっくり歩こうか」「だから転けないってば!」)

2011/2/1〜2011/3/19 拍手お礼文でした

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