旧拍手

□〜3月2日
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「ほらよ」

『わわ、ありがとう!』




ぽいっと投げられた缶の飲み物を慌てて受け取る。
あー、あったかい。




『あれ、バーダックの分は?』

「あ?俺は別にいらねーよ。寒くねぇ」

『わ、私だって寒く…ぶっ!?』




寒くないと言おうとしたら鼻をつままれた。なに、と鼻声で応えるとバーダックはニヤリと笑った。




「よく言うぜ。鼻、トナカイみてぇに真っ赤にしてよ」

『へ!?う、うっそだー!ってか、トナカイは鼻赤くないでしょ!!』

「真っ赤なお鼻の〜って無かったか?」

『それはただの歌!トナカイは鼻赤くないもん!』

「そうだな。さっさとそれで手でも温めろ」




私はもう一度お礼を言って缶を両手で包んだり転がしたりする。
うーん、あったかい。
憎まれ口をたたきながらも優しいバーダックに小さく笑う。

缶コーヒーを開けてゴクリと飲んだ。




『んー、美味しい。あったまる〜』

「そうか。てめぇは寒がりなんだからもっと厚着しろ」

『えー。だってモコモコしすぎて嫌じゃない?』

「あ?」




ほぅっと白い息を吐きながら言うとバーダックはガシガシと私の頭を撫でた。そして珍しく優しく笑う。




「小動物みてぇで俺は好きだが」

『す、好きっ!?』

「何そんなに驚いてんだ」

『だって、バーダックが、す、す…好きって…!』




めったに言わないくせに。
何をそんな珍しいものを見るような目で見てるのよ。そっちが珍しいんだっての。

寒さ以外の理由で赤くなった顔を知られたくなくてマフラーに顔をうずめた。




「俺としてはてめぇがそんな吃るのが珍しいけどな」

『う、うるさい。バーダックのせいだから!』

「へいへい。ほら、手ぇ出せ」




なんでと言う前に乱暴に私の手を握る。うわ、あったかい。

バーダックは手袋くらいしてこいくそったれと悪態をついてから指を絡めた。恋人繋ぎ。




『なんか、今日のバーダック…優しいね』

「不満か?」

『ううん!嬉しい』

「あ、そ」




ニコッと笑ってバーダックを見ると顔を逸らしてしまった。
あ、耳がちょっと赤い。照れてるんだ。




「てめぇが行きたがってたレストラン、予約してある」

『えっ!?』

「好きなだけ食え」




グイグイと私の手を引いて早歩きするバーダック。

堪えきれなくなって私は大笑いした。





たまには優しくしてやるよ




(うーん、美味しい!)

(ハムスターみてぇだな。ぶっさいく)

(なんだとー!?バーダックだけ口の横に食べカスつけて子供じゃん!!)

(んだと!?)




仲良きことは美しきかな!




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