旧拍手

□〜4月19日
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『へくち、へくちっ!』

「あ?なんだ、今の」

『へくちっ…!うー…鼻水出てきた…』

「クシャミか。なんとかは風邪ひかないって言うがな」

『うるさい。昨日バーダックが人の布団全部持っていくから』

「そうだったか?」




ずずずっとティッシュで鼻をかみながらバーダックの肩を叩く。

痛くないくせにいてぇなと呟くバーダックに今度は蹴りを飛ばした。

けど戦闘民族サイヤ人の彼は余裕の顔で避けて私の足をガシリと掴み、ニヤリと笑う。




「ちっせぇ足」

『何、あひゃひゃっ!なにすっ、あひゃひゃひゃ』

「ぶはっ!何だその笑い方」

『だって、何で足擽るの、ひぃっ!あははっ』

「テメェが蹴ってくるからだろ。ほれ」

『やっ、あひゃひゃひゃひゃ』




散々擽られてお腹が引きつるまで笑わせた後、バーダックは飽きたのかポイッと私の足を投げるように離した。
なんだこいつ、喧嘩売ってんのか。




『はぁーっはぁーっ』

「腹へった。メシは?」

『ふざけんなっ…私は、バーダックの家政婦じゃ…』

「恋人だろ。メシ」

『とても恋人に対する接し方じゃない。助けて神様』

「おら、早くしろ」




ゲシッと蹴られて立ち上がる。

ホント、なんでこんな人と恋人になんかなったんだろう。

むすっとしながら台所に立って昼食の準備をする。


でも、好きなんだよなぁ…バーダックのこと。
ああ見えて優しいし、意外と頭が切れる。

意外と、なんて言ったら彼は怒るだろうけど。

野菜を切りながらふとバーダックに視線を向けると彼は気が付いたのかこちらへ近づいて来た。




「ほら、履け」

『え、なに靴下?』

「さみぃのに素足でいるからだ。足、冷てぇだろ」

『あ、ありが…って、何してるの、そんなことしなくて…』

「ほら、右足あげろ」

『いいってば!自分で履けるし!』




慌ててしゃがもうとしたら、バーダックに大人しく料理作ってろと睨まれて止まる。

もう一度右足をあげろと言われて渋々あげると、まるでシンデレラにガラスの靴を履かせてくれるあの素敵な王子様のように滑らかな手付きで靴下を履かせてくれた。

そしてもう片方も。




『あ、ありがと…』

「…ん」




ボソッと呟くとバーダックは小さく笑って立ち上がり私を後ろから抱きしめる。

そして、ゴリッという音ともに人の頭に顎を乗せた。超痛い。




『顎、痛いんだけど…。何?どうしたの?』

「なぁ」

『ん?』

「てめぇと付き合ってどんくらいになる?」

『えーっと、5年は経ったんじゃない?多分』

「そろそろいいんじゃねぇか?」




何が、と言うとバーダックが私の手を握って包丁をまな板へと置かせる。

そのままその手を引かれて向かい合わせになった。

見上げると真剣な目と目が合って、息が詰まる。




「俺のために一生、飯作れ」

『は?』

「てめぇのために一生、稼いでやる。たまには優しくしてやる」

『ば、バーダック、それって、まるで、』

「賢いてめぇならここまで言えば分かんだろ」




ちゅっ、と珍しく可愛らしいキスをされて私は固まる。

それは、本当の、本当に…

プロポーズと、とっていいんだよね?




「まぁ、返事はイエスしか受け付けてねぇが」

『っ…バカッ!そんなの、イエスに決まって…んんっ』




全て言う前にさっきとは違う、激しくて深いキスをされてぎゅうっとバーダックに抱きついた。







我儘で、優しい私だけの王子様







(っはぁ、バーダック…)
(……さみぃな。ベッドいくか)
(え、でも、お腹減った、って)
(あ?てめぇで腹一杯になるからいい)
(!?!?!?)






バカップルだ…バカップルがいる…。



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