LONG STORY
□序章
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─前略─
私は今から、私が出会った、ある錬金術師の女の子について記そうと思う。
彼女はとても小さいのにとてもませていて、大人ぶった振る舞いには微笑ましいものがあった。
そういうと、いつも顔を真っ赤にさせて怒り出すのだけれど。
曰く、「僕は君よりもうんと長い時間を生きてきた」のだそうだ。
そうそう、彼女は女の子のくせに、自分の事を僕と呼ぶ。
別に悪いと言っているわけではない。むしろ、彼女にはぴったりだと思う。
彼女は少しずれているのだ。いわゆる、「天然」というやつかな。
普通の、そこらにいる貴族達と比べても飛び抜けて頭が良かったし、身軽で木登りや虫が好きだった。
ふっくらとしたお嬢様達に、「レディのくせになんてはしたないの」なんて言われたら、「そのはしたない僕よりも頭が悪くて鈍臭いのはどこの誰かなあ?」なんて言ってみせる。
私は彼女と出会って間もないけれど、彼女と10年来の友人であるグレンは彼女を「不老不死」だと言っていた。
グレンはあまり冗談を言わないから、きっと嘘ではないのだろうね。
もしも本当だというのなら、彼女は本当に長い年月を生きてきたのだろうか。
これはきっと、誰にも答えられない問いなのだろうね。
だから私は、ほんの興味本位ではあるのだけれど、彼女を観察することに決めた。
これから共に過ごしてゆくだろう長い年月の中で、彼女は本当に「不老不死」なのかを見極めようと思う。
─中略─