Blessing
□序章
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この国…『グリーンホライズン』では、双子の先に生まれた子は“神に祝福された子”として、可愛がられ、後に生まれた子は“神に呪われた子”として忌み嫌われた。
そんな国の王族に、双子が生まれてしまった。
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[side:闇]
物心つく前からいつも見ていたモノ、それは石の壁だった。
この部屋でそれ以外に見るモノと言えば、隅に広がる蜘蛛の巣、壁や床を這う虫、それに、日替わりでくる牢番の不満そうな顔。
僕は、生まれたときから闇と寒さの中で生きてきた。
そんな牢獄の生活のある日、来る度に僕を殴ったり蹴っていたりした牢番が言ってきた。
「お前を外に出してやる。」
そう言った牢番の顔は、笑っていた。
それはまさしく、満面の笑みだった。きっと、僕の世話を見なくて済むからだろう、と無意識のうちに理解していた。
僕も、幸せだった。石の壁と床や壁に這う虫しかなかった世界が、開かれるのだから。
それが、許されたのだから。
最初は、そう思っていた。
しかし、馬車に揺られ連れてこられた場所。
そこは、ただの地獄だった。
体中とても痛い。
毎日毎日一日の三分の二は石をただ運ぶ労働だ。
もし逆らったり怠けていたりすれば、途端に鞭だ。
食事や睡眠の時間は殆ど与えられていない。
人間というものをあまり知らないが、僕は人間として扱われていないことは、わかっていた。
僕の名前は“スコタージ”。
正確には、名前で僕を呼んでくれる優しい門番が僕を呼ぶ名。
親の顔や名前は一切知らない。
自分自身がどのような境遇で生まれてきたかさえ全く知らない。
ただ、世界中のすべての災いの根源であるということは、幼い頃の牢番の愚痴からなんとなく知っていた。ただ、それがどういう意味なのかはわからなかった。
明日も、明後日も、その次の日も、ずっと死ぬまで石を運ばされるだろうか…。
それはそれで楽なのかもしれない。
逆らったりしないで指揮官たちにきちんと従っていれば、殴られたり蹴られたりするなんてことはないのだから。