Luna

□本章 歪んだ乙女
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 私は普通の子と違います。お父さんとお母さんには心配させたくないので、普通な子であると振る舞ってきました。騙してごめんなさい。


 十三歳の春。私は初恋をしました。

 
 恋した相手、果たして誰だと思いますか?幼なじみの男の子?小説の中の勇者?はたまた、学校の先生?違います。おそらく…彼は、私のお気に入りの屋根裏部屋の隅に住んでいました。彼の食事している姿を見て、一目惚れしてしまいました。


 彼が誰だかわかりましたか?正解は、六本足のおぞましい…らしい虫、蜘蛛です。しかし、虫は虫。思いを告げることもなく、その恋は諦めました。


 次の恋は、同じクラスの男の子。クラス一の力持ちのくせに、心臓病を患っているという不思議な方でした。


 当時私は、彼にひどいイジメを受けていました。だから、私は彼のことが大嫌いでした。


 そんな彼を好きになってしまったのは、発作を起こしてしまったある年の秋。発作を起こした彼は、そのままあの世へ旅立ってしまいました。その彼のお葬式の時です。


 棺の中で眠るように死んでいる彼を見たとき、私の心の中で恋の芽が芽吹きました。


 しかし、彼は死んでいます。また、私は恋を諦めました。


 他にも、手足をもぎ取られたガラクタ人形、獲物を貪り口から血を滴らせている狼など、私が恋した相手の数は数えきれません。しかし、生きた健全な人間は一人もいません。


 どれも、世間の人が嫌悪するようなモノばかりです。どうして自分がこんな気持ち悪い性癖を持っているのか全くわかりません。ただ、本能的に好きになってしまうのです。
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