小説
□気持ちの気付き
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それに気付いたのは最近だった。
笑顔を見ると胸が締めつけられそうになって、名前を呼ばれると心臓が張り裂けそうになる事に気が付いたのわ。
「霧野、大丈夫か?」
心臓の音を止めたくて、胸を抑えていたら後ろから一番聞きたくて、聞きたく無い声が聞こえた。
「はい、大丈夫です。」
無理をして笑顔を作って笑うと、それに気付いたのか困った様な顔を向けて来る。
「今日は、もう帰った方が良いんじゃ無いか?」
そう言ってまた俺の顔を覗きこむ仕草は、可愛くて見ていられなかった。
「そうします。」
これ以上ここに居たく無かった
帰って、頭を整理して明日に備えよう
そう思って出した答えだったのに、側を離れたく無いと心が言っているのが聞こえた。
「そうか、少し待ってろ」
言うと同時に皆が居る方へとかけて行った。
遠目で見ていると、神童と何か話ている様だった。
多分
俺が帰る事を話て居るのだろう
考えていると笑顔で戻って来て、俺に背中を向けてしゃがんだ。
「体調悪いんだろ。無理するなよ」
顔だけを此方に向けて笑顔で言って来た。
呆気に取られて動け無かった俺を軽々しくおぶった
思考が戻った頃には、大きな背中に乗っていた。
「おっ重いんで下ろして下さい。」
意識した途端に最初にでた言い訳だった。
自分の顔が林檎みたいに真っ赤になっているのが分かって、更に嫌になる。
「大丈夫。霧野は、軽いから」
そう言って俺を下ろそうとしない
いや
もしかしたら、俺が本気で抵抗していないのが分かっているのかも知れない。
暖っかい背中が気持ち良くて、耳に聞こえる背中からの心臓の音が気持ち良くて、俺は何も言え無くなった。
だから
心の中で呟く事にした。
「すきです。円堂監督」
何時かちゃんと言葉に出来たら良いなぁと思いながら
END