小説

□思わせ振りは貴方の特技で
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可愛いとおもった。
滑らかな身体も
眩しい笑顔も

男だと知っていても、愛おしくて仕方無かった。

考えると自然と視線がそちらに向いてしまう。

「神童、抜け駆けは駄目だからなッ」

ベンチで鬼道コーチと話をしている円堂監督に視線を向けていると
隣にいた霧野が黒い笑顔で囁いてきた

「分かってる」

霧野にそう答え、ベンチから視線をそらす

そぅ
分かってるんだ
監督は皆のものであって、誰か一人のものじゃ無い事なんて

それでも
明日の練習メニューを考える時など、監督と二人っきりになれるチャンスが他より多いい分
期待も多くなる

「神童、今日の帰りちょっといいか?」

何時の間にか近くにいた監督に鼓動が早くなるが、顔に出さない様にそっと頷く

俺の返事が分かると、監督は満面の笑顔を俺に向けてベンチへと戻って行く

その誘いに下心が無い事を知ってしまっている自分に虚しくなるが、監督と二人になれるチャンスを無駄にはしない。

部活の終わった後
部室で監督と二人っきり

机を挟んだ向こう側にいる監督を盗み見する。
それだけの事で鼓動が早くなる自分

鼓動を誤魔化したくて
頭を左右に振る

「どうした神童?」

俺の行動が不思議だったのか
監督が小首を傾げながら問い掛けてくる

「なんでもない、です」

上げた目が監督の目と絡みあい直視できずに、視線を監督から反らす

自分の行動に後悔して涙が出そうになる

円堂監督が好きすぎて、愛しくて
そんな感情を同性である円堂監督に向けている罪悪感も絡み
自分を埋めつくし溺れさせる

俯いて考えに浸っていると、頭に暖かいものが触れて
そっと俺の頭を撫でる

目を向けなくても誰だか分かる暖かさ
それでも
見たくて、視線を上へと向けると笑顔の監督と目が合う

「監督?」

監督の意識が分から無くて口を切るが、答える素振りを見せずに
俺の髪を触り続けている

「円堂監督?」

「神童の髪、気持ちいいなぁ」

言うと同時に
片手だったのを両手に増やしながらそっとまた撫でる

何時のまにか抱き付かれる形になっていたが
監督は気にせず髪を撫でる

円堂さんは分かって無い
貴方の仕草一つ一つが俺を期待させている事に


何時か気付かせてあげますね




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