長編
□第一幕「エミュリエールの歴史はここからはじまった!」
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転校は初体験じゃなかった。
小学校4年まではフランスにいたらしいし、覚えている中では中1の春に一度転校している。
「じゃあ、行ってくるね」
あたしはリビングでゆったりなおじいちゃんにそう伝える。
「おう、もう行くのか。よし、頑張ってこい。気をつけてるのじゃぞ?」
「ん、了解。行ってきます。」
あたしはこくりと頷きローファーを履く。玄関の扉を開けて、いままでとは違う方向へ歩きはじめる。
エミュリエールまでは徒歩30分。少し遠いけれど別に気にならなかった。
電車、とかバスの通行手段もあるっちゃああるのだけど。
なんとなく歩いて行くべきな気がした。
家を出て約30分。エミュリエールの正門が、見えてきたところであたしは息を呑んだ。
「税金の無駄遣いってこういうのを言うんだ…」
とんでもなく大きな学校だった。