□宝石のようなそれ
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都会の夜景で、そこだけ別世界のように雰囲気が違った。
高層ビルの間を縫うように跳んでいく人影。
それこそ、今最も騒がれている人物だった。
警察の目を欺き、どんな有名人より目立つ髪型の男。

怪盗クラブ。

蟹をトレードマークに金目のものを盗んでいく。
その身体能力は底知れなかった。

「この宝石は頂いた。」

怪盗が警察の前から消えたのは、つい先程のこと。
予告しておいた宝石は、警察がいたにもかかわらず無くなった。
音も無く消えた宝石のかわりには、蟹の描かれたカードが一枚だけ。

「またやられたな。」

呟くのは今回現場を担当していた刑事、クロウ。
今までにも何回かクラブの事件を担当していた。
しかし、盗品を取り返すことはもクラブの顔を拝むこともできない。
いい加減に諦めかけていた。

「そもそも顔がわかんねぇから捜索もできねぇし。」

最近寝ていないせいか、隈の目立つ目を瞑る。
愚痴をこぼせば、その分だけ自分の負けを認めるような気になる。
だから、それ以上の言葉は呑み込んだ。

宝石の置かれていたケースから、カードを取り出す。

『宝石頂戴した。』の文字に、唇をかみ締めた。




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