ストーリー

□かれぺSS(7月)
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■7/1:商店街(side:深紅)■
今日から7月。
彼女と出逢ってからは、時の流れが早く感じる。
「それにしても……」
家の中をキョロキョロと見て回る。
「やることがないな」
任せっぱなしは申し訳なく思い、掃除でもしようかと場所を探す。
「昨日やったって言ってたっけ」
洗濯は朝のうちに済ませ、夕方の取り込みだけ頼まれていた。
庭に目を向けても、綺麗に整備された畑や花壇しか目に入らない。
「クー、散歩にでも行くか?」
[キャン!]
勢い良く起き上がり、リードを持ってきた。
「よし、商店街で夕食の買い物もするぞ」
リードを着けようとした時。
キッチンへ駆け出し、すぐに戻ってきた。
[キャンキャン!]
空っぽのジャーキーの袋を足元に置き、訴える。
「……しっかり把握してんだな。わかった、買ってやるよ」
[キャン!]
最近は彼女より、コイツと居る時間の方が長い気がする。
職場でも一緒だ、当たり前と言えばそれまでだ。
「お、深紅くん!いい魚入ったぞ、安くするからどうだい?」
「帰りに寄らせてもらいます」
「ああ、待ってるぞ」
3歩進めば声をかけられる。
「深紅くん!トマトいらない?商品じゃないんだけど、うちのトマトがなりすぎてさ」
「いただきます、帰りに寄らせてもらいますね」
俺が大事にされるのは、彼女のおかげだ。
初めは警戒していた商店街の人たちもいた。
若凪の様子を気にかけ、今では俺まで世話になっているが。
ジャーキーを購入し、商店街を通り抜けた頃には、両手いっぱいの荷物。
「食べ切れるか?……食べ切るしかないか」
商店街の人たちの気持ちを腕に抱え、帰路に着いた。
「若凪にも渡そうな」
[キャン!]
荷物に混ざり、長方形の紙が3枚。
もうすぐ商店街の七夕祭。
願い事を考えながら、ゆっくり歩く。
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