ストレスにより脳細胞が萎縮し、免疫システムの老化が早まるということを示した研究が、ニューオーリンズで開催の米国精神医学会(APA)年次集会で報告された。

 米ロックフェラー大学(ニューヨーク)神経内分泌学研究所のBruce McEwen博士らの研究によると、ラットに繰り返しストレスを与えると、脳のニューロン(神経細胞)の萎縮を示す徴候が認められたという。過去の研究で、ストレスによって脳海馬の神経細胞が萎縮し記憶力が障害されること、意思決定や注意力に関わる前頭前皮質と呼ばれる部位でも萎縮が起きることが明らかにされていた。
今回の研究では、ストレスを与えられたラットは、餌の場所が変わったときに同じ手掛かりを別の方法で利用する能力(知的柔軟性)が失われたという。

 McEwen博士は、これはストレスホルモンが脳を作り変え、別のものに変化させることを意味すると説明している。
ストレスを与えられた脳は、不安が大きくなり、注意力、学習能力、記憶力などが低下する。
しかし、脳は回復力が極めて高いため、心理療法、認知行動療法および薬剤を組み合わせることにより正常な状態に近づけることができるという。
また、脳の損傷は時間の経過によっても癒やされ、運動にも極めて大きな効果があることが明らかになってきている。

 この集会で発表された別の研究では、ストレスが免疫システムを破壊することも示された。
米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)の精神分析医Elissa Epel氏によると、ストレスによって細胞内の染色体末端部のDNAが短くなり、適切に働かなくなるという。この部分のDNAは、靴ひもの先端のほつれを防止するプラスチックキャップのような役割をもつ。

 健康な女性を対象とした研究の結果、心理的ストレスがこの末端部の短縮に関わり、免疫システムの老化を早めることがわかった。
この問題への対処法は、「十分な睡眠、活動的であること、健康的な食生活など、慢性疾患の予防法してすでに知られていることを守ることだ」とEpel氏は述べている。

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