うつ病の発症率が高い米国で、「人生の盛り」に達したベビーブーム世代(ベビーブーマー)において特に高い傾向がみられることを示す新たな調査結果が、医学誌「Archives of General Psychiatry」10月号に掲載された。
報告者の米コロンビア大学臨床精神医学・公衆衛生学教授のDeborah Hasin氏によれば、「うつ病がベビーブーム世代という年齢層に特異的に影響を及ぼしていることを明らかにした初めての研究である」という。

Hasin 氏らは、18歳以上の米国成人4万3,000例を対象に調査を実施。
その結果、過去1年間にうつ病の発症をみたのは5.3%であり、1度でも発症の経験があったのは13.2%であった。
また、特にベビーブーム世代の年齢層において、若年層や高齢者よりも大うつ病を引き起こす要素が強い特異的な因子の存在が示唆された。
さらにうつ病と薬物乱用との相関関係はそれほど強くなかったものの、薬物依存症との間には強い相関関係が認められた。

Hasin 氏は「薬物障害を認める患者の治療にあたっている医師は、患者に乱用あるいは依存症のいずれがみられるかを明確にし、薬物依存症であれば、特に大うつ病発症に注意する必要がある」と指摘する。

研究では、男性よりも女性、既婚者よりも独身あるいは離婚者、原住民や貧困層にうつ病が多く見られ、アジア系、ヒスパニック、黒人などのマイノリティー(少数民族)では、白人に比べ発症リスクの低いことも明らかになった。

エール大学精神医学教授で、女性の健康に関する研究部会会長のCarolyn M. Mazure氏は「今回の調査結果は、米国ではうつ病が公衆衛生に関わる大きな問題であることを示す、きわめて重要なものである」と述べる。
同教授は、精神医学的治療や社会福祉面での支援を受けることが少ないベビーブーム年代は、確実な治療や対応を受けられないことが多い点を指摘している。

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*ベビーブーム:一時的な新生児誕生率の急上昇。特に1939年から1945年にあった戦争の後の一時期を指すことが多い。
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