KNDとオリジナル
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「‥あ、あったあった!」
ーあの悲惨なテストを不本意にも目撃してしまってから約数分後。
ようやくベイルが目的の品を見つけたようだ。
「え!見つかったの?‥って、それ‥」
‥何だ、普通に水色のコンパクトじゃない‥と-ナンバー3。その何とも素っ気ない反応に、何だいその目はーベイルは少しむくれる。
「ちょっ!これをただのコンパクトだとか思ちゃいけないよ?
‥良いかい?これはボクの持ってるコンパクトの色違いのやつでね、
中を開いても一見何の変哲のない鏡しか付いてないけれどー‥」
ほら、とベイルが-ナンバー3にその鏡を向けると、そこに映るのは今いる部屋のみで覗き込んでいる自分が何故か映っていなかった。
「‥あ、あれ‥ちょ‥な、
ど、どうなってるのこれ‥??」
-ナンバー3は驚愕の色を浮かべる。
自分の目を疑いつつも、いやそんな筈はないと信じられない彼女は、ちょっと貸して!とベイルからコンパクトをひょいと取り上げて代わりに今度は彼女を映すが、やはり背景であるこの部屋しか映らない。
「‥な、何で??」
「‥まあ、言うなれば、
これがボクがマイナス世界に引きずり込まれた原因のスペア‥って所かな?要するにこの鏡の部分が、
プラスとマイナス世界を結ぶ通り道になっちゃってるんだよ」
この間は、たまたま覗いたら誰もいない筈だったのにマイナス世界の自分が映り込んでてね‥
でも、鏡が媒介だからコンパクトだけは持っていてもマイナス世界には持ち込めないから、これだけは
こっちの世界で代わりの物を探す必要があったんだよ‥面倒だけど。
「な、なら直接アンタの部屋のアンタが持ってた場所にこっちの世界のコンパクトがある筈でしょ?」
「いやあ‥あっちもそこまで間抜けじゃないよ。多分これを置き去りにすれば後々でからくりがバレてプラス世界に戻ろうとするボクがこれを真っ先に探しにくるのは想定内だろうから、ボクのは彼女がどこかに隠し持ってる筈‥それも、ボクがあまり隠し場所にしない盲点にね」
だからボクは、そんな見つかるかどうか怪しい方より‥彼女の視界から外れていて隠し忘れるであろう、
シューロのマイナスの部屋に賭けてみたんだー、と得意げに笑う。
「この前シューロが色違いで同じものを持ってるって知ってね。
でもシューロの方はマイナス世界に興味があるから、
多分その反対の彼はプラス世界の自分に興味ないんじゃないかと‥それからシューロはこの引き出しにはいつもゴミみたいな物を突っ込んでたから彼は逆に大切な物や隠したい物を入れてるんじゃないかと‥」
「‥う、うう‥ごめん、
な、なんか反対とか逆とか一度に何個も聞き過ぎて頭こんがらがってきたわ‥」
「‥大丈夫!自分でももう
何言ってるかわかんなくなってるよ」
とか言って、舌を出してお茶目に「てへぺろっ☆」と親指を立ててウインクするベイル。
「ふー、
これだけ頭使えばもう充分だよね‥
もうこれ以上使うと頭が風船みたいに膨らんでパンクしちゃうかも‥」
「‥で、でも今の話が本当なら、
これを使えばアンタはプラス世界に戻れるのよね?」
「うん!」
「‥じゃあ‥」
‥急に、-ナンバー3がしんみりとした表情を浮かべる。およ?どうしたのそんな複雑な顔しちゃって‥とベイルが呑気に尋ねる。
「‥お馬鹿さんね‥
アンタがプラス世界に戻るって事は、あいつを止める事であるのと同時に‥アタシとの別れでもあるのよ?」
「‥あ‥」
‥そっか‥とベイルもしまった、と口をあんぐりさせる。
「‥そういえば、キミはナンバー3‥クキちゃんのマイナスサイドの子だったんだよね‥」
いやあ‥外見はクキちゃんと全く一緒だから、ついツンデレなクキちゃんと一緒にいる気になっちゃってたよ‥うん、とばつが悪そうに眉を顰めて頭をかく。
「‥そういえばアンタ‥最初にここに来た時、アタシをクキと勘違いしてたわよね?
‥プラス世界のアタシとアンタって、友達か何かなの?」
-ナンバー3の質問に、
うーん、と少し考えるベイル。
「‥まあ、友達というか‥
以前‥レインボーモンキー売ってるお店に行った時にたまたま出会ってね。色んな種類があってどれを選ぼうか迷ってたら声掛けてくれて可愛い子をオススメしてくれたんだー」
それから、話が飛躍して同じKNDに所属してる事を知って、レインボーモンキー絡みの用件にご一緒させてもらってるって感じかな‥
「‥そっか‥」
「うん」
もしやこれは‥いかないで的なあのパターンですか?何て考えてみる。しかし、-ナンバー3はふぅ‥と短いため息を吐くと急に仕方ないわね‥と言わんばかりの笑顔を見せた。
「‥まあ、とりあえず‥
それなりに交流があるって分かっただけでもよしとするわ。
‥さあ、これでプラス世界に戻って
早くアンタの弟と親友を助けに行きなさい」
「‥分かった。でも、良いのかい?
キミはボクの為にこれだけの時間と労力を費やしてくれたんだから、
言ってくれれば、その埋め合わせというか‥お礼くらいならするよ?」
「そう?
‥じゃあ、一つ良いかしら?
‥プラス世界のアタシと、
これからも仲良くしてあげてね?」
「‥おっけぇ、じゃあ、
今度暇な時にでもレインボーモンキーのテーマパークに付き合うよ」
これで良いかな?とベイルが彼女に振ると、-ナンバー3はぷぷっと小さくはにかむように笑い出した。
そして‥
「‥ありがと、ベイル」
今回初の最高の笑顔を見せてくれた。それには思わずベイルも口元が緩む。
「‥あれ、そこはちゃんと名前で呼んでくれるんだね?‥あはは、
何かそういうのって‥女子からでも嬉しいよねー」
「‥なっ!!
ば、馬鹿な事言ってないで、いいから早く行きなさいよ!」
弄り過ぎて‥ツンツンされた。
-続く-