KNDとオリジナル

□09
1ページ/1ページ


**********

ーとりあえず、善は急げとか何とか。見るからに怪しい奴なら出来る限り早急に捕まえるのがベストだろう。もし、何も事情を知らない「黒フード」の人物が今日も今日とてノコノコ現れるのであれば、
今からでも包囲網を張っておいて捕まえた方が良いに違いない。

幸い、今日のシューロは珍しく朝からアキラと接触を図る為に月面基地‥基、彼女が黒フードに襲われた(?)以降から頻繁に姿を見せる現場でもあるがそこに早く来た為、
今ならこのまま月面基地にいれば、まだそいつが現れるいつもの時間でないので運良く遭遇する可能性がある。

「‥よし、じゃあ早速捕獲作戦の準備に取り掛かりますかっ、と‥」

‥かと言い、
アキラからあまり近い場所で待ち構えていれば露骨に怪しまれるので、辺りを見回し、部屋の隅の方に丁度観葉植物の植木があるのを確認し、その裏に上手く目立たないように隠れて待機する事にした。

「‥よいしょ、っと‥おっ!何だ意外とピッタリ収まったな‥」

シューロが隠れたのを見届け、
アキラとナナンはいつも通りの仕事に戻ってその時が来るのを待つ。

「‥予定だと、奴が現れるまであと10分くらいってトコかな‥」

ぐいっ、とシューロが右手の袖口を捲り上げると‥何の変哲もない普通の腕時計が付けられていた。

*******
*****
***


「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

ーそれからかれこれ五分。
案の定、というか当たり前だがまだ噂の黒フードの人物は全く現れる気配がない。

長期戦になると予想していたとは言え、流石のシューロもただじっと植木の裏に隠れて息を潜めるのに多少の飽きを感じて来ているのが分かる。

「‥あ、ねえアキラ‥みて、
シューロの奴、何かやってる‥」

「‥え?」

ナナンが目敏くアキラを呼び、
シューロが飽きて植木の裏で気怠そうな表情をして無意識なのか貧乏揺すりみたいな動きで足を揺らしているのを目撃。

「‥あいつ、あそこに、いるの‥もう飽きて、ない‥?」

「‥どうやら、
そうみたいですわね‥」

心なしか目つきも悪く見えてくる。
貧乏揺すりは構わないのだが、あまり物音を立てるとそこに隠れている事が早々にバレかねない。

はぁー‥と面倒臭そうにナナンが溜息を吐き、仕方ない‥ちょっと、待ってて‥とアキラをその場に残してシューロの居る植木に近寄る。

「‥え?あ、ちょっと‥
良いんですの?今そちらに行くと、
例の方にシューロさんが隠れているのバレてしまいませんこと‥?」

確かにもう例の人物が近くまで来ていてこちらの様子を伺っていたりなんかしていたら、下手に動けば敵に「ここにお前を捕まえようとしている奴がいるぞ」と警戒心を煽らせ‥最悪、こちらが気づく前にさっさと退散してしまい‥それ以降、
用心して別の場所に現れるようになるかもしれない‥そうなると却って厄介だ。

「‥多分、大丈夫‥じゃない‥?
だって‥まだ、いつも‥そいつが来る時間になって‥ないし、それに‥」

「‥私、ああゆう‥不真面目な、奴見てると‥何か、無性に、イライラするの‥」

そう言うナナンからは、よもや宣言通り眉間に皺が寄っていて‥見るからに怒りマークが額に付いていそうな表情をしていた。

「‥そ、そう‥ですの‥?」

「‥うん‥」

大丈夫‥すぐ、戻るから‥と言い、
何とかアキラを言い含め、ずかずかとシューロの居る植木の前へ。
しかし‥肝心の当人シューロはそれにさえ気づかない様子。正面ばかり見ているせいで横に大層ご立腹なナナンが迫って来ているというのも知らず呑気に欠伸をする。

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

そして、何をするやら‥
素早くシューロの額に右手の人差し指と親指を向け、ピシッ!っと勢い良く弾く。所謂‥デコピンだ。

「うっ!?」

痛っ?!と騒ぐシューロの額には、
見事真っ赤な痕が残っていてその威力を物語っている。

「な‥いきなり何すんだよ!?」

「‥五月蝿い、大体‥アンタが‥
怪しい奴‥ちゃんと、見張ってないのが、いけないんでしょ‥?」

歯に衣着せぬナナンの物言いに、シューロも負けじと食い下がる。端から見れば実に不毛な口論でしかない。遠巻きにその様子を見ていたアキラも流石に頭を抱える。あれじゃ声が大き過ぎて案外バレないものも馬鹿でも気づかれてしまう。

「いやだって、見張るも何も‥まだそいつが来るっていう噂の時間まで5分もあるじゃん?!」

「そういう、問題じゃ‥ないから‥」

どうやら言い合う内に、
互いの負けず嫌いな性格といい、頭に血が登り気が立っているせいかちょっとで済むと言っていた筈の口論は口争に発展。
非常に面倒くさい状況へと一転した。まるで、プライドの高い人間同士が異論でぶつかり合うそれと似たりよったりだ。

気づけば、予定時間まであと2分もないというのに‥あの二人はそんな事も露知らずまだギャンギャン言い合っている。

(‥はあ、いつの間にか事が起こる前にこんなにゴタゴタしてしまって‥本当に、大丈夫なのかしら‥?)

「‥全く、仕方ないですわね‥」

いい加減ガツンと言ってやってこの場を諫めなければならないか‥そう考え、アキラはやれやれと思いながらも二人に近づいていく。

そして‥





ー続くー

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ