KNDとオリジナル

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「‥僕が言いたいのはさ、
君がそうやってすぐ暴力に走るのは他人との理解が上手くいかない事に対するいわば「八つ当たり」でしかないって事なんだよ?」

心が弱いから‥自分自身が傷つくのが怖いから、実力行使でどうにか思い通りにしようだなんて‥

「そんな浅ましい事をするから、君は強くなれないんだよ?分かる?」

そう言いつつ、既に虫の息となったシューロに容赦なくきつい猛攻をこれでもかというほど浴びせる黒ずくめの人物。

「‥うっせぇ‥な‥」

息を切らしながら、片膝をつくほど全身ボロボロになりながらも、シューロは反論の言葉を口にする。

「‥んな事、
ベラベラベラベラ‥エラそーに言われたってなぁ‥分かんねーんだよ‥」

ゆっくりと、しかし着実に
膝を立てもう一度地面に両足を付けて立ちはだかる。

「‥ふーん、まだ頑張る気力が残ってたんだぁーちょっと意外だな?」

もう大分身体は限界だと思うんだけどなぁーと他人事のように言う。

「ねえ、もう疲れたでしょ?そんなに無理していきがってどうすんの?」

まだ分かんないの?結局君はどう足掻いた所で僕には勝てないんだし、いい加減諦めてさ‥

「‥大人しく、死んでくれない?」

「‥っ!!?」

震える足でどうにか立ち上がった矢先、黒ずくめの人物は冷酷な目つきでそう吐き捨てる。しかし、表情はそんな物騒な事を言っているとは微塵にも感じさせないくらいの「笑顔」を浮かべていた‥

「‥アキラを、
どうするつもりなんだ‥?」

こいつは危険だ。
早い所アキラを助けなければ何をされるか分からない。もしかしたら、自分を消してからアキラも消すつもりかもしれないし‥最悪、もう‥

それを察してか、黒ずくめの人物はまた壊れたように乾いた笑いを浮かべる。

「‥やだなぁ!
そんな怖い顔しないでよぉー!君の探してる女の子なら、ちゃーんと生きてるからさ!‥でーもっ」

先程から手にしているのとはまた別の刃物を懐から取り出し、それをまるでダーツの矢のように勢いをつけてしゅっ!と投げる。刃物は凄いスピードでシューロの顔スレスレを通過、瞬間後髪がふわりと風にあおられその内の数本が切れて地面に落ち、最後には背後にあった木にどすっと突き刺さった。

「‥残念だけど、このままタダで帰してあげる程僕も善人じゃあないからねぇー?君はここで殺すし、アキラはこのまま「ある場所」から「ある場所」に移動させちゃうよー」

‥あ、ただ言っておくけど僕は別にアキラを殺すつもりはさらさらないからね?

「君も‥聞いた事くらいはあるでしょ?好きになった子を、他の男の目に触れないようにこう‥人気のない場所でさぁ、やれ手錠だとか足枷だとか‥ってこれでピンと来ないようだったら到底僕の考えなんて分かる訳ないよー」

‥成る程。今まではシューロの存在なんて微塵もなかったからあっちも強引なアプローチだけで済ませていたのだろう。それが‥彼の筋書きになかったタイミングで現れたせいで計画を狂わされかねないと判断し、こんな大胆な手に及んだに違いない。

「‥やっぱり‥狂ってやがる‥」

背筋が一瞬にして凍えるような寒さを感じた。おかしい。正体が誰であろうともうこいつは常軌を逸している存在でしかない。色々な意味で。

「‥ふふっ、狂ってるだなんて‥また随分なご挨拶だよねぇ?僕はただ、君の存在が後々計画を遂行するに邪魔だと分かったから、こうして直接消しに来ただけだよ?」

そもそもさぁ‥どうして君はアキラを助けようとなんてしてるの?

「君はアキラの事、何とも思ってないでしょ?それなのにズカズカ割り入ってきてさぁーおかげで焦って予定より早く事を起こさなきゃいけなくなっちゃったんだからねー?」

「‥焦る‥?」











「‥だから‥何度も言わせんなよ‥んなスカした表情で‥平気で死ねとか消えろとかほざける奴‥誰がどう見たって狂ってるじゃあ‥ねーかよぉおおっ!!」

柄にもなく大声で叫び、そして先程そいつがしたように懐に飛び込み、反撃とばかりにシューロが黒ずくめの人物の胸倉を掴み、そのまま素早く右手を握りしめて力任せにガツン!と殴り付ける。

「うっ!痛っ!?」

意外にも効いたのか、相手はよろめき殴られた箇所を左手で覆いながらそのまま後ろに後退りし手にしていた刃物も地面に落としてしまい、サクっ!と足元の土に突き刺さる。

ー今だ!相手がひるんだ隙に、
ここぞとばかりに攻撃を浴びせればまだ勝機はある!

残った力を振り絞り、なるべく急所を狙って力の限り殴り付ける。ひたすら殴る。刃物を失った途端、驚く程相手の戦闘能力が低下していたので、このままいければ力押しでいけるかー?

「‥この一発で決めるっ!だから、大人しくしろよなっ!!」

そう言って拳を構えた刹那、あれほど殴られるままだった黒ずくめの人物が急に不適な笑顔を浮かべ始めたではないか‥

「‥まだまだ、詰めが甘いね?」

まさかそれで‥僕より優位に立ったつもりだったの?と急に殴られモードから体制をぐるりと変え、シューロの背後にすばやく回り込み首元を左腕で押さえ込みいともあっさりと身動き取れない状態にしてきた。

「‥人間ってさ、どうして勝てるかもって思うと隙だらけになっちゃうんだろうねぇ?」

「‥っお前‥」

さては‥油断させるためにわざと殴られてたって事か‥?それに今更気づいた所で、どうせ君は死んじゃうんだから意味ないよねー?と黒ずくめの人物はまたしても首元に突きつけたナイフを振り上げようとする。

やばい‥切られる‥
咄嗟に目を閉じ真っ暗な世界で断末魔の叫び声を聞く。

‥あれ?

「‥何だこれ‥全然痛くねぇ‥?」

あんなものくらったらひとたまりもない筈なのに、自らの身体には一向に意識が無くなる程の激痛など襲ってこないのに、疑問を感じ恐る恐る目を開いてみると‥

「‥は?え‥」

「‥うわあああああっ!!」

何と自身の首はしっかり繋がっている。寧ろ‥痛みで激しく悶えているのはあれほど優位に立っていた筈の黒ずくめの人物の方だった。

どうやらナイフを振り上げた瞬間に、何者かがその手を狙撃したらしい。しかも、彼の手からは本物の血がぽたりぽたりと垂れている。
傷口はまだ浅いものの‥実弾で打たれた事は明白だ。
その反動で刃物は地面に弾き落とされ、シューロも彼の手から解放されその場で倒れこみうつ伏せになった。

「い‥一体‥だ、誰‥!」

そう言い黒ずくめの人物は、辺りを血眼になって見回すがそもそもここは木が生い茂っているせいで視界が悪く、仮に誰か居たにしてもその人物が少し離れた木に隠れてしまえばこちらからは分からない。

「‥ーくっ!!」

負傷した右手を庇いつつ、足元に落とした刃物を素早く拾い上げそれを構えながら鋭い目付きで周囲をウロウロし始めた。そのせいで、目前にいるシューロからは注意が逸れているようだった。

(‥もしかして‥今ならいけるか‥?)

黒ずくめの人物に気付かれないように、ゆっくりと死角から鞄に左手を突っ込み中から取り出したのは、見た目は何の変哲もないただのタンバリンである。





‥端から見れば、
この非常時に何をフザケた物を出しているのかと言う台詞を言われそうな所だが‥

(‥今だっ!!!)

相手がシューロに背を向けた瞬間を狙い‥彼はタンバリンを力一杯叩いた。パァンっ!!と派手な音を立てると、途端にその周囲の空間が一瞬だがぐわんと歪み、やがてその歪が収まるや‥突然黒ずくめの人物は喋る暇もないまま前のめりにバタンと倒れこんでしまった。

「‥よし、やったか‥?」

倒れた後、その人物が起き上がって来ないのを確認しシューロはようやく自力で立ち上がり、戦いで乱れた服装を整え再びタンバリンを鞄に仕舞う。





ー続くー

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