KNDとオリジナル

□03
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「‥でもまぁ、
考えてみれば‥今回のはあの時と違って「失敗が許されない」とかそーゆうのがないからその分、気は楽だな‥うん」

‥とか言いつつ、前回のアキラの件で
あんなに豪語してた癖に守る以前に、アッサリと誘拐された‥という事を触れるのは御法度としよう‥そうしよう。

何て回想に耽っている内に、
外が段々と騒がしくなってきた。耳を澄ませてみれば、聞き慣れた飛行音と徐々に近づいてくるお馴染みの機体。
KNDのスキャンパーのお出ましだ。

という事は‥恐らくあれにリーダーの言っていた隊員が乗っているのであろう。

到着するタイミングも踏まえて、そろそろ部屋にいる隊員達にこの事を知らせた方が良いだろう。そう思い、ポケットから通信機を取り出し報告しようとした‥その矢先。

***

ーズドォオォオオオンッ!と妙な重低音が外から響き渡る。嫌な予感しかしないのは重々承知の上で、窓から顔を出して様子を伺う。すると‥やはり
先程の音は例のスキャンパーから発せられたものだった。丁度、このツリーハウスに着陸しようと高度を下げて低空飛行をしていたのが仇になるとは‥誰が想像したのだろうか‥?

最早それは、
着陸とはとても呼べたものではない。誰がどう見たって墜落と言うのが正しい。
スキャンパーからは勿論の事、機体が突っ込んできたKNDの乗り物の格納庫もろともドス黒い煙が上がっている。
同時に、ツリーハウスの壊れた箇所がボロボロと数メートル下の地面に勢いよく崩れ落ちる。

幸いそこは今は、一人っ子一人歩いていなかったので大事には至らなかったが‥問題なのは、ツリーハウスの内部にいる隊員達の方だ。恐らくスキャンパーが着陸する筈だった部屋には、誘導する為に誰かしらがそこに居合わせていると思われる。
それに、最悪の場合‥スキャンパーに乗っている人達も無事じゃ済まない。

とりあえず‥隊員達が無事かどうかだけでも先に確認しておくのが先決。
使いかけた通信機をまたポケットにしまい、一目散にスキャンパーが墜落したであろう部屋へと向かう。

***

スキャンパーが墜落した部屋は、想像以上に閑散としていた。多分‥殆どの隊員を奥の部屋で歓迎パーティの準備に割いたのもあって、この事態に未だ気づいていない隊員もいるとすれば、
自分以外の誰かが駆けつけるにはまだ時間がかかるかも知れない‥

それはそうと、
ざっと見た所例のスキャンパーを除けば後は何の被害も受けていなかった。
元々こちらのセクターで保有していた乗り物には傷一つさえないし、格納庫自体墜落した箇所だけ抉ったように穴がぽっかりと空いたくらいで、同じような材質の板を天井と床とで数枚宛てがえば支障はないだろうし。
そのスキャンパーも、運よく穴にはまらず穴の直ぐ横で横転して黒い煙をプスプスと上げてはいたが、
形が変形する程の惨事は免れたらしい。

暫くすると、横転して出入口が真上になったスキャンパーの扉がガタガタと揺れ動き、ぱこっ!と小気味良い音を立てると扉が開いて、
中から砂煙と共に一人の人影が現れた。

‥しかし。

「‥ぷぎゃっっ!!」

足取りが覚束なかったせいだろうか‥
機体から出て、地面に向かってジャンプしようとした際に足を踏み外したらしい、地面に顔面から見事にダイブしてしまう結果となり、うつ伏せになったままその人影は動かなくなる。痛みと衝撃によって気を失ってしまったのだろう‥

その人物に続いて、今度は二人の人影が扉からひょっこりと姿を現す。
そちらの二人は先程の人物とは違い、
足取りもしっかりしていて扉から出るなりぴょんと軽やかにジャンプをして、倒れている隊員の直ぐ横に着地。

良く見るとその二人は、どちらも髪が長く女の子らしい服装をしていたので、
女子なのだろう。反対に地面に突っ伏している方の隊員はヘルメットのせいで髪型は分からないが先程の気を失う間際の低い声と服装から察するに、男子とみて間違いなさそうだ。

二人の女子の内の、オレンジ髪のツインテールで濃いピンクの洋服を着て頭に特徴的な形をした白とピンクのカチューシャをつけた方の子が、何やら楽しそうにぴょんぴょん跳ねながらもう一人の少女に向かって話しかけている。

「あーおもしろかったぁー!
KNDの乗り物ってすごいよねー!大体がガラクタ‥なんちゃらで出来てるんでしょー?なのに、
ちゃーんとしたひこーきとかロケットとかと同じくらい安全だしー不思議だよねー?ねー?ハッカねーね?」

話しかけられた「ハッカ」と呼ばれた方の少女は、髪の根元はピンクっぽいのだが毛先にかけて真っ白の白髪になっており、結び方もツインテールではあるが左右でそれぞれ結ぶ位置がちぐはぐだし、
そのヘアゴム代わりのものから薄い青のワンピースにあしらわれているもの、茶色いロングブーツにこれでもかとばかりに、橙で白いレースのネクタイを付けている。極めつけは、フレームがきちんと合っていないのか彼女が顔を下げる度に一々ズリ落ちてくる眼鏡だ。
何だか申し訳なさそうな感じの風貌で、しかもおどおどしていて如何にも気の弱そうな性格に見えて仕方がない。まるで正反対だ。

「‥で、でもでも‥そのぉ、
だからって‥さっきみたいなのはやり過ぎだと、思うです‥けど」

「えー?そんな事ないよー!ミナはふつーに飛んで行くのじゃつまらないと思って、ちょっとだけ空中でグルグル回してみただけなのにー?」

「‥あのぉ、その‥何というか‥
この乗り物は‥ジェットコースターとは違うので、そういう運転は良くないと思います‥です‥余計なお世話だとは‥思いますけど‥」

どうやらミナという少女が言うには、
遊園地なんかで良く見るジェットコースターの動きをスキャンパーで再現しようとしたらしい。それが原因で、機体の一部に多大なる負荷が掛かり回路が焼け焦げコントロール不能になり、今に至るそうだ‥

「ざーんねん、折角おともだちになったハッカねーねに喜んでもらえると思ってたんだけどなぁー」

‥喜ぶも何も、あと一歩間違えば
彼女はおろか自分も大変な事になりかねなかったというのに喜ぶ方が変だ。
純粋で無垢な子供程、その発想力には恐ろしい意味を孕んでいるとは良く言ったものである。

ハッカは「‥いえ、そういうのだったら‥出来ればもっと別なのが‥良いと思うです‥はい」と素早く答える。

「‥そ、それはそうと‥美夏さん‥
とりあえず‥何だかんだで、目的地のセクターE(イギリス)に着いたみたいだし‥早い所、ここの皆さんに挨拶しておいた方が‥良いと思うです」

「あ!そうだそうだっ!
ミナすっかり忘れてたっ!!」

てへっ☆とばかりに言うと、
えーと、ここのセクターで一番えらい人って‥どこにいるのかなぁ?と辺りを見回すが当然この部屋にはいない。
やがて彼女の視界にたまたま様子を見にきたシューロが入り、あっ!と声を上げるなり「ねーねぇ!」と呼びかけながら走って一直線にこちらに向かってくる。

‥だがしかし。

「@+○☆\%→♪*〒」

彼女は恐らく、母国である日本語しか話せないのであろう‥シューロに何かしら日本語で話し掛けてきているのは分かるのだが、生憎彼は母国のイギリス叱りの英語くらいしか使わない故に、
他国の言語はイマイチ理解できない。

(‥うん、駄目だ日本語で喋られても全然分かんねーや‥)

分からない以上、答えようがない。
暫く黙りこくっていると、彼女はあれっ?と首を傾げるがどうやら言葉が通じていない事にはまだ気がついていないらしい‥もう一度、
同じニュアンスで喋ってはいるが、今度は聞きとり易いようにゆっくりと喋ってくれていて、何とか理解してもらおうと彼女なりに努力しているのが伺えるが‥残念ながら問題はそういう事ではない。

「‥あれれー?もしかして、ミナのコトバ間違ってる??」

流石に検討がつかないようで、側にいたハッカにそれとなく助け船を求める。
当然のように、ハッカは淡々と問題点を指摘する。

「‥いえ、日本語としては‥問題ないはずです‥でも、ここは‥日本じゃないですので‥多分日本語じゃあ通じないだけかと‥思うです‥はい」

「‥あ!そっか!イギリスは日本語あんまり使わないんだっけ!」

うっかりした!とばかりに手を叩く。でも困ったなー、ミナ‥日本語しかお父さんお母さんに教わってないから、イギリスのコトバ分かんないや‥と肩を落とす。

「‥ハッカねーね、分かる?」

「‥そうですね‥私も、かじって覚えた程度なので‥本場で通じるかは怪しいですけど‥やってみましょうか‥?」

そう言うと、彼女は何処からともなく分厚い冊子らしきものを取り出してきた。
どうやら日本語で書かれた英語の喋り方ガイドのようなものらしい。

「‥とりあえず、
何からお話しすれば良いかしら‥?」

「んーとねー、そうだ!
お父さんが言ってたけど、初対面の人にはまずじこしょーかいするのがキホンなんだって!」

面倒だったから、
ミナはしょーりゃくしたけどね☆とあっさりとんでもない事を言う。

「‥分かりました、
じゃあ、先ずは自己紹介から‥」

ー続くー

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