fairy tale
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団長が大好きだった。
猫っ毛を三つ編みにすれば、他の誰よりも結うのが上手だと誉めてくれる団長。
他の女の子にも同じことを言っているのを知っていたけれど、それでも大好きだった。
いつも団長はニコニコ笑っているから、私もつられて笑う。
たとえその笑顔が 団長の本当の笑顔じゃなくても、それでも大好きだった。
少しでも私を見てくれるのなら、それでいい。
どんなに他の女の子といる時間の方が長くても、一瞬でも私を瞳に映してくれるのなら、もうそれだけでいい。
それだけでいいから。
「団長、おはようございます」
「ん、おはよ」
団長の左腕に絡むのは、知らない女の子。
見ろ、といわんばかりの顔を向けてくる。
見えないフリ。
笑顔が崩れないように、上げた頬が落ちないように 見送った。
全然平気。
でも本当はどこかで、まだ私だって団長と腕を組んだこと無いのに、とか 私だって団長と沢山話したことあるんだから、とか醜いことばっかり考えてる。
夜中に、壁越しに聞こえる団長と誰かさんの声。
楽しそうな笑い声も、いつの間にか吐き気のするようなあえぎ声に変わる。
そんなときは、耳を塞いで聞こえないフリ。
こうすれば大丈夫。
そうやって何度も自分を説得するのに、毎夜必ず流れる涙。
それでも団長が大好きだった。