fairy tale

□02
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ノックをしようと上げた拳を引っ込めた。


こんな朝から、女の声。



体が硬直して、昨日みたいに変な感じになる。後頭部がカーッとして、頭に何も浮かなくなって。




この扉の向こうは、嫌な予感しかしない。
でも今日は頑張るって決めたんだ。
だから、





ガチャ、



「おはようございます、団長」



「ん、あれ?」





扉を開ければ 楽しそうな会話がやんで、キョトンとしたような顔をする団長。そして昨日の女の子。





なんでまたいるの。
なんでそんな風に仲良くしてるの。





どうして、なんで。
私と同じ雑用のクセに、新入りのクセに、私だってそんなに話したことないのに。





醜い感情は止めどなく溢れ出てきて、どうしようもならなくなる。







「おかしいなー、今日から係はこの子に代わってもらった筈なのに、連絡まわってなかった?」




「…え?」








一体何の話。交代?

わたしが?あの子と?




どうして?







「一週間は私が担当のはずじゃ…「だから代わって貰ったって言ったでしょ、あんたドジだし面倒くさいし」






そんな、そんな筈じゃなかったのに。待って、もう一度仕事をさせて。面倒くさいなんて言わないで。






「ソレ言ったら、雑務長がアンタのことクビだって。だから部屋で大人しくしてなヨ」



「そんな、急すぎます!私は…「そういう所が面倒くさいって言ってんの。邪魔だから早く部屋に帰りなヨ」






初めて団長に睨まれた。

瞬間、もう何も言う気がなくなってただただ状況を受け入れるしかなかった。
団長に嫌がられてるんだ、私。






涙が出そうだった。



だって、こんな言葉を好きな相手から聞かされて、受け止めなければいけないんだから。



こんなの、酷すぎる。







私は何も言わずに部屋を後にした。


団長に呼び止められた様な気がしたけど、気のせいだ。呼び止められる理由なんかないじゃない。


悔しいやら悲しいやらでやっぱり涙が零れてきて、でも止まれないから私は走り続けた。






一気に階段を登れば、また昨日のひと気のない最上階。


力なく椅子に座り、俯いてすすり泣いた。
こんなことしても、何も変わらないのに。






その時、クスクスと誰かの笑声。

何かと思って振り返れば、数人の女の子達が私を見て笑っていた。





はめられたんだ私。
みんな、わざとだ。



わざと私に連絡をしなかったんだ。
団長本人から直接クビだと言われることでも望んでいたんだろう。恥でもかかせたかったんだろう。





どうして私なの。

他にだって雑用はいるのに、なんで私ばっかり。



私が精一杯睨めば、余計に楽しそうに笑う女の子達。



私は顔を背け、泣き顔を長い髪で隠した。

唇を噛み締めたけど、目頭は更に熱くなっていく。どうにも止まらない。それも悔しくて服の裾をギュッと握り締めた。




こんなに好きなのに。
こんなに想ってるのに。



昨日誓った拳に、何滴も冷たい涙が落ちた。





to be coutinue...




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