fairy tale

□04
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もう、私が直接止めるしかない。
そんなことしたら、私の身はどうなるか分からないけど、でもそれしかない。


広間の食事は食堂から運ばれる。
だからまず食堂に行けばいい。






私は手伝いのフリをして食堂に忍び込んだ。

厨房には何人も立っていて、完成した料理などは奥の部屋に置かれたままになっている。


チャンスだ。




身を屈めた姿勢のまま、素早く走り込んで、まずはテーブルの下に隠れる。


そうっと厨房を覗いて、私に気づいていないことを確認してゆっくり机の下から這い出た。


机の上には何十皿も料理が置かれている。
とにかく、木の実みたいのが盛られた皿を探すんだ。




林檎みたいな赤いの、赤いの……あった!真ん中にある皿に山盛りになってる。



ヘタの付け根がねじれてる実が毒入り。

盗み聞きした言葉を思い出して、林檎の皿に近づく。



しかし手にとって見ても、ヘタは普通でただの林檎ばかりだ。


これじゃない、これでもない。




私は次第に焦り始めていた。
早く見つけないと、私の存在がバレたら終わりだ。




林檎の山を落ちないように掻き分けていると、一つだけおかしなヘタの林檎を見つけた。

あの言葉通り、ねじれている。





これだ!





私は早く、早くと急ぐあまり、掴んだ毒入り林檎を勢いよく取り出した。

その拍子にポロポロと林檎が皿から落ちていく。




しまった、




慌てて転がる林檎を止めようとしたけど、林檎は勝手に転がり続けて 最後には机から落ちてしまった。


ゴト、という鈍い音。
林檎が床に落ちた音。



冷や汗が浮かんだ。
顔を上げれば、こちらに気づいた雑用係が驚いたような顔をする。




「おい、貴様そこで何をしてる!」




一人がそう叫んだと同時に、私は部屋から逃げようと走り出した。



毒入り林檎は私の手の中。
これさえ取ってしまえば、もう後はなんでもいいんだ。




「待て!この野郎、つまみ食いか!」




逃げる私の目の前に立ちはだかる人々。

振り向けば 四方を塞がれ、逃げ道はなくなっていた。



「このアマ!」



後ろ髪を思いきり掴まれ、思わず悲鳴を上げた。




「その林檎はお前のために用意されたものじゃない、今日おいでになった客や春雨重鎮のためのもの!返せ!」



「違う、これはっ…」





力づくで奪おうとする沢山の手が伸びてきた。私は奪われまいと必死に林檎を抱え込んだ。



すると離そうとしない私を、今度は足で踏みつけ始めた。

頭や肩、腹、背中を沢山の脚が踏みつける。


痛い、痛い、誰か助けて。




それでも私は離さなかった。




そして、朦朧とした意識の中、どうすればこの林檎がまた皿に戻らずに済むかを考え 思いついた。







私が食べてしまえばいい。



このまま取られて団長が食べてしまうくらいなら、私が先に食べてしまえば、何も問題もない。





「!貴様、何をしている!」


「畜生、食いやがって!」





林檎にかじりつけば、罵り声が降ってきた。

でもほらやっぱり、私が口をつけたものは料理としては出せないだ。



最後にお腹に蹴りを食らい、かじりかけの林檎は私の手から落ちた。



乱暴に髪を掴まれ、食堂の外まで引きずられた私は、廊下の外に投げ飛ばされる。





もう痛みとかは分からなくなってきた。
蹴られたせいで体中が痺れている。
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