shangrila short

□The Burnt Macaron
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The Burnt Macaron





「ねぇ、何読んでんの」

「あ、団長。お菓子のレシピですよ」

「え、何か作れんの?」

「ハイ、マカロンに初挑戦します!」

「へぇ、まかろん。美味しいの?どんなやつ?」

「えへへ、出来てからのお楽しみですよ〜!」



団長はこれから任務らしい。
帰ってくるまでに完成させなければ。


まかろん楽しみにしてるネ、と言い残して行った神威さんを見送り、早速 戦場(キッチン)に向かう。


「えっと、卵白を泡立ててー。あ、砂糖を加えながら!…あ、やべコレ塩じゃん。ん?違った、塩化カルシウムだった。やべ」

レシピメモ片手に悪戦苦闘する私。

「なんか酷い匂いする」


なんとか鉄板に絞り出して、乾燥させるまで至った。

ここまで行けば、ほぼ出来上がったも同然。

手が空いたので、テレビをつけてみた。

「お!『そよ風にしやがれ』がやってる!うおお、カッコいーなやっぱり!」

そんな調子でついついテレビに夢中になる。


ふとテレビの上端に表示された時間を見た。もう11時過ぎだ。

急に現実に戻り、慌ててオーブンにマカロン達を突っ込む。

ヤバいヤバい、団長帰ってきちゃうよ!
ピッとスイッチを押して、オレンジ色に染まったオーブン内を覗きこむ。

自分の足のがたがたガタガタ貧乏揺すりがハンパない。


暫くして ピーっと鳴って、オーブン内が暗くなった。
よっしゃ、できた!間に合った!

ガコン、と扉を開ければ、何故か生焼けのマカロン達。

あれ、加熱時間まちがえた。18分なのに8分にしちゃった。


慌てて扉を閉め、もう10分追加しようとした時、急に廊下がさわがしくなった。

どうやら団長が帰ってきたみたいだ。マズイ。これはマズイ!
テレビなんぞに夢中になって、生焼けマカロンを団長に差し出すわけにはいかない。

なんか焼けるもの!オーブンより早くマカロンを焼けるものはなんだ!


ふと目に止まったアイロン。
片付けるのが面倒臭くて 未だ放置されている。
勿論スイッチは入ったまんまだから、今すぐ使える!アイロン使えるゥ!
この加熱部分にマカロンを乗せてジュッジュッって手際良くやれば…


ジューッ。



真っ黒に焦げる。
そしてアイロンにべったりくっ付く。剥がれない。


なんだコレ、へドロみたいになって…


がちゃ、


「ただいま〜」

ぎゃぁあああ帰ってきちゃったァ!隠さなきゃコレ隠さなきゃ!でもどこに?口の中に!!


ぱくっ、もぐもぐも…ぐ、

「まかろんできた?」

ぬぅおあああああああ!!何だこのマカロン!マカロンじゃねェこんなの唯の暗黒物質だ!
脳みそがしびれるゥ!


「なんか凄い焦げ臭いけど、大丈夫?…ねぇ」


「ごくんっ、ぶは!だ、だだだいじょーぶですよ ははははははっ うぷ、おぇ ごくん」

「なんか食べてた?しかも呑み込んだ後、吐いてまた呑み込んだよね今」

「そんなき、汚いこと、うぷ、しませんて!」

「ホラ今も吐きそうになった。何食べたの?無理しない方がいいヨ」

「べ、べつにっ、アイロンで焼け焦げたマカロンの証拠隠滅を図って食べたりなんかしてませんよ!マカロンに砂糖と間違えて塩カル入れてなんかいませんよ!?」

「……へぇ、胃薬飲む?」

「はい!飲みまずぼろろろろ」

「うわ汚い、本当に吐いた」

「だんちょ、ごめんなざぼろろろろろろろ」

「もうしゃべんなくていいから。ゲキ物入りの焦げたまかろんなんて、もう食べちゃ駄目だよ?」

「バレてましたがぼろろろろろ」

「ほらバケツ、それからタオル」


ゲロゲロする私に 親切にしてくれる団長。
バケツを抱え込む私の背中を、優しくさすってくれている。
これも焦げたマカロンのおかげなのか。

じゃぁこれからもっとゲロゲロして団長に構ってもらおうかな、なーんて。



fine.



***
汚い話だなオイ。
 

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