shangrila short
□鈍ちん。
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「団長なんか、大っ嫌い!もう勝手にすればいいじゃん馬鹿!」
そう叫んで団長の部屋を飛び出したのは、昨日のお昼のこと。
振り向きもしないで部屋を出たから、団長の表情なんて知らない。どうせいつもの笑顔だったんだろう。
そう思うだけで腹立たしい。
お陰で、昨日の夜はイライラして眠れなかった。
今日の朝、鏡に映ったクマのあるやつれた自分に腹が立って、コップを一つ割ってしまった。
お気に入りのうさぎ柄だったのに。
全部全部、団長のせいだ。
そもそも団長が 私にあんな事言ったからいけないんだ。
『小夜ってさ、疲れる』
『な、いきなり何ですか!私まだ何も言って、『ホラそうやって直ぐにムキになるとことか、面倒臭いし。何より、誰彼かまわずベラベラくだらない事喋るし』
『…わ、私だって団長の部下やってるのは疲れます!』
『!、あっそ。そんなら辞めればいいんじゃない?あんたの代わりなんて沢山いるんだ』
『っ、団長はそれでもいいんですかっ』
『…別に。那奈ちゃんとか、美裕ちゃんとかいるもん。小夜なんかよりずっといい子だもん』
まさかそこまで言われるとは思ってなくて、一瞬言葉を失った。
そして冒頭へと戻る。
誰だよ那奈ちゃん、美裕ちゃんって。知らねーぞそんな女。
どこで引っ掛けてきたんだあのアンテナ馬鹿。馬鹿馬鹿馬鹿。
「ふん、もう二度と団長の部屋なんか行くもんか。謝ってくるまで許してあげないし、口もきいてあげないもん」
そう一人で呟いてから、ふと昨日の団長の言葉を思い出す。
『あんたの代わりなんて沢山いるんだ』
私なんて、取るに足りない存在ってこと?
私なんか要らないってこと?
じゃぁきっと、今頃は 私よりずっといい子な那奈ちゃんとか美裕ちゃんと楽しくやってるの?
それなら私が一人でこうしてるのなんて団長は知らないし、興味もないのかな。そうだよね。
どんどん気分が沈んでく。
さっきまで強気だった姿勢が何時の間にか崩れ、終いには泣き始めてしまった。
嫌われてたんだ、私。
被害妄想なのか何なのか、不安だけでは言葉が足りない何かが私の中で膨らんでいく。
のしかかるようなソレに、耐え切れなくなって ベッドに潜り込んだ。まだ夕方。ちょっと早いけど、いいや。
ひやっとしたシーツの冷たさもかんじないくらい、気にならないくらいに泣いている自分って何なんだ。所詮、団長の部下でしかないのに。
来てくれないかな、なんて淡い期待をなんとか押し出そうとするけど、どうしても目が自室の扉に向いてしまう。
気づいたら 開け、開け、と心の中で祈っていた。
あの扉が開いて、団長が顔を出せばいいのに。
でも、そんな事を考えているうちに 私はそのまま眠ってしまった。