shangrila short

□鈍ちん。
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小夜と喧嘩した。


昨日から全然口をきいていない。
それどころか、もう夕方になるっていうのに一度も会っていない。


ちょっと言い過ぎたかな、なんて別に反省してるわけじゃないけど。


でも、大っ嫌いだなんて言われるとは思ってなかったから少し驚いただけ。


今もこうして忘れられないのは、きっと腹が立っているだけ。



腹が立つ。



でもそれだけじゃない、あの時も 何か得体の知れない感情に押される様に 負けじと小夜に言い返したんだ。


小夜にどんな言葉を期待していたかなんて、自分でも知らないけど。

でも少なくとも、大嫌いだなんて言葉が欲しかったわけじゃないことは分かる。



一人でモンモン考えていたらたどり着いた一室の扉の前。




小夜の部屋。




何でこんなとこに来たのかなんて、知らないヨ。


知るか。来ちゃったんだもん。


なんか、来たかったんだもん。






ノックなんかしたことないけど、してみた。


返事がない。



開けて中を覗いてみたら、薄暗い部屋の中央のベッドが膨らんでいるのが見えた。





寝てる。







音を立てないように、そっと近づいた。

間近で見ると、閉ざされた瞼から伸びる睫毛に水滴が乗っているのがわかった。



まさか泣いてたなんてね、と他人事みたいに呟いてみたけど それと同時に胸の奥がズキンと痛んだ。



あれ、俺 怪我してたっけ?


見てみたけど、血も流れてない。


でも痛いのが止まないから、眠る小夜の横に潜り込んで 抱きしめてみた。



そうしたら、不思議と痛いのが治った。





もっとギュッてしたら、小夜が苦しそうにうめいた。


もっともっとギュッてしたら、小夜が逃げようとするみたいに動いたから、もっともっともっとギュッてした。

でもまだ小夜は起きないから、もっともっともっともっとギュッてしてみた。


あ、ミシミシいってる?あは。
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