shangrila short

□遠くて近い。
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窓の向こうに飛行機雲。
賑やかな食堂から一人 逃れるようにして着いた自室で、私は窓にもたれる様に座っていた。
たそがれた空を裂く様に伸びているそれをなんとなくなぞっていたら、不意に後ろで扉が開いた。

柔らかい音と共に閉まった扉、それと同時に「やぁ、」という独特な響きのあるテノールの声。
振り向けば、あの空と同じ髪をした団長が立っていた。


「…どうかされました?」
「いや、なんとなく」


そう言って、また団長は私のとなりに腰掛ける。

昨日も、一昨日も、日が暮れるまでずっと二人でこうしてた。窓辺に向かい合うように腰掛けて、ひたすら空を眺める。
いつも 間に一定の距離が保たれている私達は、今日も歯がゆい隙間を作る。まるでそれは境界線のように、私の中では 触れることは愚か 近づいてもいけないものになっていた。

人間だなんていう、ひ弱な自分が隣に居ていいわけがない。
そう勝手に決めつけて、他の女の子みたいに団長には近づかない。
殺されたくないから、とか 離れていくのが怖いから、とかじゃなくて。


でも、団長を避け始めたら 以前より団長と居る時間が増えた。
毎日こうして用も無いのに私の部屋にやってくる団長は、何を考えているのやら。



日が沈んでも、私達はそのまま外を見続ける。
星明かりに互いの影だけが浮かび上がっていることで存在を確かめ合っているみたいに。


暫くすれば、団長を呼ぶ阿伏兎さんの声。


「行かなくていいんですか」
「うん、仕事なんてないから」
「嘘」
「うん、嘘」


そう言ってクスリと笑う。
無邪気なのか、団長の影の仕草は可愛らしいものがある。


「何でいつもここに来るんですか?」
「太陽が堕ちるのをみたいから」
「…そうですか」
「なに、期待した?」
「いえ、とんでもない」
「…あそう」
「団長こそ、今期待しました?」
「さぁね」








***
初書きほのぼの夢。
何がしたいんだよチミ達はまったく〜。ま、微妙な距離の二人、みたいな。
自宅の窓から見えた夕焼けがあまりにも綺麗だったんですよそれはそれは。故に書いてみちゃったりして。あは ごめんなさい。

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