shangrila short

□恋人ごっこ
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「ね、遊ぼうヨ」

「…な、何ですかいきなり」

「暇なんだ今」


私は暇なんかじゃないのに。師団の始末書が山積みになっているのが見えないのだろうか。


団長が問題発言をした。


「ね、恋人ごっこしようか」


そう言うなり 団長の弧を描いた薄い唇が、いきなり私の唇と重なった。


私は突然の事に目を見開き、顔を背けようとしたが 団長の手が後頭部に廻り 固定されてしまった。持っていた万年筆が床に落ちたけど、団長はそんなのお構いなし。


今の団長は 恋人ごっこなんて、可愛らしく言った時とはまるで別人。逃がすまいと、私の手首を掴んだ手はやけに熱い。


さっきまでの気の抜けた様な雰囲気はなんだったのか。
私は団長が来るまで、必死に仕事をしていた筈なのに。


座っていた椅子から引きずり下ろされ、そのまま床に仰向けにされる。

唇が離れた隙に呼吸をしようと必死で、私は声も出せない。

こんなの、ごっこだなんて生易しいものじゃない。
夜兎の団長相手に 人間の私が務まるものじゃない。


うっすらと涙が浮かんできた私の目と、団長の鋭い目が重なった。


「ホラ、今のうち。逃げたいなら逃げればいい」


私の傍に屈みこんで、ドアを指さす。まるで私を試す様な口調は、いつもみたいな余裕が感じられない。

私はそのまま、動けずにいた。いや、正確には動かずにいた。



「なんで逃げないの」


顎を上に向けられ、すこし強い口調で言ってくる団長。


「だって、」


隠していた感情が溢れて、言葉にならない。ずっと、ずっと憧れていた団長だから。


「また続きするヨ?怖いだろ俺が」

「怖くなんかないですよ。怖がってるのは、団長の方です」


勇気を振り絞って言った言葉に、団長は固まった。
何も言わないまま、じっと私の目を覗き込んでいる。


「団長、何を怖がってるんですか。らしくないですよ?」


なんとか余裕そうに振る舞って言えば、団長は艶やかに目を細める。


「……流石だネ、後で怖くなっても知らないから」



そういって、また噛み付くようなキスをした。





恋人ごっこ


でも、ごっこ遊びは これで終わり。
夜からは何もかもが本気だから。






***
意味わかんないですよねコレ。
お互い片想いだと思ってて、先に一歩踏み出したのが神威さん みたいな。アレ この説明も意味わかんない。つまりは 遠回しに告白し合ってるんだなウン。

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