shangrila short
□聞き間違え
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「無いぃぃぃ!!」
耳をつんざく様な声を上げたのは私、小夜。
だって無い無い無い無いどこにも無いんだもの。え?イヤイヤ、プリンじゃないよ今回ばかりは。
「何で?どっかで落とした?イヤ無い無い無い。だって昨日は何処も出歩いてないもの、ヒッキーだったものォ!」
あわばばば、どこやっちゃったんだろ馬鹿、私の馬鹿。
数日前の団長の眩しい笑顔と厳しい言いつけが頭に浮かぶよ…
たまたま地球に用があって、暫く船を降りることになった私に 団長が言ったんだ。
あの時、団長が寂しそうな顔するから思わず、何かお土産で欲しいモノありますかって聞いちゃったんだよね。馬鹿だ私馬鹿。そしたらさ、
『ねぇ、からおけって知ってる?なんか江戸が発祥らしいんだけどさ、強いのかなソレ。どんな風貌かなソレ。分かんないし興味有るから、からおけ持ってきてヨ。持ってこなかったら殺す』
テイクアウト無理ィイ!!カラオケの事でしょソレ無理無理無理ィ!だいたいカラオケ強くねーしってかカラオケに強いも弱いもねーしィ!風貌ってなんだよカラオケの風貌って!店の外見の事?いやソレはテイクアウト出来ないだろ流石に!何だよカラオケの店の壁引っぺがして持ってこいってかァ!
私は悩んだ。
悩みに悩んで出た答えはただ一つ。無理。
でも、無理に決まってんじゃねーか!!
って言おうとしたのに、
「あぁ、からおけですね、からおけ。おっけー!からおけおっけぇ!からおけおけおけおっけぇ!」
とか意味解らない言葉連発してそのまま地球に向かった。馬鹿でしょ私馬鹿なんです。
何考えてんだ馬鹿私の馬鹿そんなに命が惜しいかそうとも惜しいよ命!チキンだからな私!
今回は団長も任務で他の星に行ってる。船に帰ってくるのは私の方が一歩早い筈。それまでになんとかせねばァ!
色々と考えた。
考え抜いた末の、幾つかの候補を挙げてみる。
その1.厚紙に、からおけって書いてハイって渡す。何コレって聞かれたら、からおけさんは持って帰ってこられなかったんで代わりにからおけさんのサインもらって来ましたって言って吹っ飛ばされる。何コレ小学生並の提案。
その2.カラオケの店長を拉致ってくる。団長が何か言ってきても、全ては店長任せ。後に、店長と共にぶっ飛ばされる。
その3.なんとかカラオケの外壁を剥がして欠片を持ち帰る。後に、カラオケの店長と団長にはり倒される。
アレ。
どの選択肢とってもダメージでかいじゃん。
アレ。
そんな時、歌舞伎町をぶらつく私の目に飛び込んできた看板、『からあげ』。
似ているぅうう!コレ似てるよねコレぇ!
そうだ、聞き間違えたって事にしよ。そうだそうしよう。
ナチュラルに渡せば大丈夫だろ。それに食べ物なら団長の機嫌を損ねる事はあるまい!
という事で、安売りだったのでからあげ10箱買った。重い。
それでもなんとか船に運び入れて、春雨の母艦にたどり着いた。
団長が帰るのは明日。からおけ(からあげ)の件はどうにかなったし、一安心。お風呂入ってゆっくり寝よー。
そう思って自室に向かった。
そして今日の朝、つまり今にいたる訳なんだけど。
「からあげ何処だァアア!!」
今ね、血眼になって探してんの。もう目から血の涙が出そうなくらい目ェ見開いてんのカピカピなの眼球。
「なんでぇ、あんなでっかい荷物失くすわけないじゃん!どこやったんだ私!」
で、ふと思い出す。
アレ、からあげ船から母艦の入り口に下ろした後、どうしたっけ。
アレ。
「やべぇえええ!からあげ置き去りにしてきたァアア!」
チーター顔負けの速さで廊下をつっきり階段をくだり阿伏兎さん的なモノを踏み潰してハッチに向かった。
無い。
「無いぃぃぃ!!」
冒頭とまるっきり同じじゃねぇかァ!
ヤバイよコレ。……あ、走馬灯が見える。
待てよ、からあげの箱=からあげボックス(カラオケボックス)が一人でに消えるわけがない。
とすると、誰かが持って行ったのでは…
そうだそれしかない。ちきしょー誰だよ私のからあげボックス持ち逃げした奴。血祭りじゃぁボケぃ。