melancholy short

□禁断の果実
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毎日の日課。
それは毎晩、寝る前に神威団長の部屋に行くこと。
行けば必ず 笑顔で招き入れてくれた。
前までは。









深呼吸をしてから軽いノックをする。
中からは素っ気無い返事。



「神威団長、」


「……また来たの」


「っ、はいっ………」


「…用が無いなら帰りなよ。邪魔」


「あの、阿伏兎さんから伝言で 明日「知ってるよ。任務のことでしょ?もう聞いたから、」


「……す、すみません」


「…ホラ、さっさと帰って」


迷惑そうに手を振る団長。
未だ、此方を見ようともしない。


「…あ、あの団長、」


続きを言えずにいると、明らかに不機嫌そうな顔で団長が振向いた。
呼びかけたはいいが、次に出る言葉が見当たらずに 結局思いついたのは、


「…お、おやすみなさい」


自ら別れを告げる言葉。



「ん、おやすみ」



そっと団長に微笑んでみせたけど、団長はニコリともせず直ぐに私から目を逸らした。


なんだかいつも以上に、胸の奥がぎゅうっとして、もう話す事なんか無いのに まだここに居たいという思いで一杯だった。
もう一度だけでいいから、振向いてくれないかな。
笑って、なんて言わないから。


そんな淡い期待を抱きながら部屋を出て、扉が完全に閉まるまで団長を見つめていた。


でもやっぱり、団長は振り向かなかった。
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